- 作者: クレイトン・ロースン,田中西二郎
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1961/05
- メディア: 文庫
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ロースンの第四長編、1942年作品。1959年に世界推理小説全集54として翻訳。1961年文庫化。長らく絶版だったが、1994年に再版。
復刊フェアで購入した一冊。ロースン作品を読むのは『帽子から飛び出した死』以来20数年ぶり。というか、ロースン作品はこれしか読んだことがなかった。カーと並ぶ密室本格派といわれながらも、日本で読める作品はごく僅かだったと記憶している。『帽子から飛び出した死』については例の密室トリックしか覚えておらず、つまらなかったという印象しかない。
ということで久しぶりに読んだロースンだが、面白かったとはとうてい言えなかった。容疑が降りかかった新聞記者のロス・ハートは、これまでの作品の語り手である。粗筋紹介にもあるとおり、実際の密室殺人に超現実の謎までが降りかかってくるのだが、それが逆にドタバタな印象ばかりを与えており、読んでいても腰が落ち着かない。カーの作風を下手に取り入れたかのようだ。そもそもマリーニの一人称って「俺」だったっけ? 自分のイメージからは「私」なのだが。
あちらこちら走り回ってばかりいるうちに気がついたら推理が繰り広げられ、事件は解決するのだが、謎が解けた、という爽快感はまったく得られず。とりあえず絶版作品を読むことができてよかった、以上の感想はなし。ロースンの長編作品はこれが最後らしいが、結局長編を書くだけの筆力がなかったんじゃないの? 言い過ぎかもしれないが。