平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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吉来駿作『キタイ』(幻冬舎)

キタイ

キタイ

 

  8人の高校生は、死んだ仲間・葛西を甦らせようと死者復活の儀式・キタイを行う。それから18年、復活を遂げた葛西はキタイの秘密を知る仲間を殺し、永遠の命を得ようとするが……。死者による、時を超えた惨劇が始まる。(「TRC MARC」の商品解説より引用)
 2005年、第6回ホラーサスペンス大賞受賞。加筆修正のうえ、2006年1月、幻冬舎より単行本刊行。

 

 第一章は、18歳の姿のままの葛西が、かつての仲間を殺し続け、女は犯す。第二章は18年前、登場人物の高校時代の話。第三章は、第一章で残った者たちと葛西が対峙する。
 綾辻行人が選評でスティーブン・キングの『IT』や『ペット・セマタリー』を先行作品として挙げていたが、どっちも読んでいない身としてはさっぱりわからない。死者が甦る方法としてはなるほど、ありだなとは思って読んでいたが、対象によって異なる部分があったりしてご都合主義だなと思わせる。そもそも、肝心の中身が読みにくくて辛い。第一章は唐突に視点が変わるし、登場人物の描写が足りなくてどんな人物だかよくわからないまま話は進むしといった次第。そして第二章はなんだか痛々しい高校生がたどたどしく破局に向かっている印象しかない。第三章になってようやくホラーらしさが出てきて、物語もテンポよく進む。登場人物をもっと減らし、過去パートをもっと整理すれば、より怖い作品ができたんじゃないか?
 改善点がいっぱいあって、何だかもったいない。葛西のあくどさをもっと突き詰めて書いた方がよかったと思う。なんかアイディアを整理しきれないまま、勢いだけで書いたような作品だった。