平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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麻耶雄嵩『さよなら神様』(文藝春秋)

 

さよなら神様

さよなら神様

 

  隣の小学校の先生が殺された。容疑者のひとりが担任の美旗先生と知った俺、桑町淳は、クラスメイトの鈴木太郎に真犯人は誰かと尋ねてみた。殺人犯の名前を小学生に聞くなんてと思うかもしれないが、鈴木の情報は絶対に正しい。鈴木は神様なのだから――(「少年探偵団と神様」)。衝撃的な展開と後味の悪さでミステリ界を震撼させた神様探偵が帰ってきた。他の追随を許さぬ超絶推理の頂点がここに。(「BOOK」データベースより引用)
 「少年探偵団と神様」「アリバイくずし」「ダムからの遠い道」「バレンタイン昔語り」「比土との対決」「さよなら、神様」を収録。
 『オール讀物』『オールスイリ』等に2010年~2013年掲載。2014年8月、単行本刊行。

 

 『神様ゲーム』の神様こと鈴木太郎が再登場。どの短編でも冒頭で犯人の名前を言うのだが、強固なアリバイがあったり、犯行が不可能だったり、挙句の果てに聞いたことのない人物だったり。桑町淳は本当にその人物が犯人なのか、試行錯誤する羽目になる。
 なんとも麻耶雄嵩らしいと言っていいのだろうか。普通の本格ミステリを書く気はないのだろう。感想の書きづらい作品だが、これだけひねくりまくった作品も珍しい。所々でおっと言わせる推理もあるのだが、それ以上に結末がねじくれている。後味の悪い結末も多く、とても小学生の思考とは思えないものも多い。それも含めて、「これが麻耶雄嵩だ」と言ってしまえば、それですべてが通用しそうなところが恐ろしいのだが。読んでいて、おもしろかったのも事実だし。何はともあれ、最後にやられました。色々と怖いわ。
 なんとも形容しがたい作品だが、これ以上のパターンを作ることができるのか、聞いてみたいところ。