平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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タイガー戸口『虎の回顧録 昭和プロレス暗黒秘史』(徳間書店)

虎の回顧録 昭和プロレス暗黒秘史

虎の回顧録 昭和プロレス暗黒秘史

 

  日本プロレス所属時に片道切符、シューズ、トランクスだけ持って渡米し「ヒール」としてアメリカン・ドリームを実現したレスラーがいた。だが、彼はジャイアント馬場の策謀で全日に引き戻され3番手に甘んじ、金銭トラブルを理由に新日に移籍。その後、再渡米しWWFに参戦ホーガン、シュワツェネッガー、ドナルド・トランプらと知り合う。「レスラーは個人事業主」の信念の元、今なおマットに立つ戦いの半生が、プロレス界の秘話とともに明かされる。(粗筋紹介より引用)
 構成は原彬。2019年2月、刊行。

 

 タイガー戸口の自伝。実際はタイガー戸口にインタビューして答えたものを原彬がまとめたのだろう。そのため、すべて会話口調になっている。
 生まれから日本プロレス入団、海外遠征、日本プロレス崩壊、全日本プロレス参戦、新日本プロレス移籍、WWF参戦、その後といった構成である。
 全日本プロレスのころから見ているせいか、タイガー戸口という名前よりはキム・ドクという名前のほうがしっくりくる。大木金太郎と組んでインタータッグを取ったころが全盛期だったと思う。当時はジャンボ鶴田のライバルで、鶴田と60分戦った試合は名勝負だったらしい(あまり覚えていない)。タイガー戸口と改名してからはいつの間にかスケールダウンしてしまうし、新日本に移籍してからも今一つで、はっきり言ってしまうと使い捨てにされたイメージしかない。その後のWWFではジョバーだったせいで活躍したイメージはないが、5年も所属していたのだからそれなりに評価はされていたのだろう。
 この人はビッグマウスだったことで有名で、しかも毒舌。本書でも馬場や鶴田、それに新日本の悪口がいろいろ書かれているが、ある程度は納得できるものであり、逆に言えば冷たく扱われる存在でしかなかったともいえる。カブキやナガサキに比べたら海外で華々しく活躍したイメージもない。
 上から目線に辟易するところはあるものの、それでも当時の海外プロレス事情は読んでいて面白い。特にWWFステロイド事情は実際に体験しているから言える内容も結構ある。確かにこのころ、不自然に太っていたような。全日本プロレス時代はいい体をしていたのに。
 このところ、海外で活躍していたレスラーの自伝を何冊か読んだ。やはり当時はよかったという内容のものが多い。時代が変わり、プロレスの世界も変わった。しかしリング自体は変わらない。プロレスはプロレス。いつまでも追い続けたい。