平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ『赤い右手』(国書刊行会 世界探偵小説全集24)

結婚式を挙げに行く途中のカップルが拾ったヒッチハイカーは、赤い眼に裂けた耳、犬のように尖った歯をしていた……。やがてコネティカット州山中の脇道で繰り広げられる恐怖の連続殺人劇。狂気の殺人鬼の魔手にかかり、次々に血祭りに上げられていく人々――悪夢のような夜に果して終りは来るのか? 熱に憑かれたような文体で不可能を可能にした、探偵小説におけるコペルニクス的転回ともいうべきカルト的名作、ついに登場。(粗筋紹介より引用)

「New Detective Magazine」1945年3月号に35,000語で掲載。同年、65,000語に増補改稿し、1Simon and Schuster社から単行本刊行。1997年4月、邦訳単行本刊行。ロジャーズは出版社に勤務しながら小説を書き続けたパルプ作家で、1922年にデビュー。様々なジャンルの小説を書き続け、1984年に亡くなった。本作は著者の探偵小説2作目。

「カルト的名作」と当時評判だった作品で、一気読み推賞だったので、時間の取れたときにようやく読むことができた。ただ、読み終わった瞬間、何だこりゃと思っただけで、面白いとは思えなかった。

医者のハリー・リドルの覚書を読んでいるうちに、これはただのサイコサスペンスかと思っていたら、最後に謎解きになった展開はびっくりさせられるものの、時系列は滅茶苦茶だし、場面がいつ切り替わったのかわからなくなる部分もあるし、何だこの登場人物はと思わせるところもあるし。

一体何を信じればよいのかわからないし、偶然の多用はあるし。正直言って、作者も何も考えていなかったんじゃないかとしか思えない。言ってしまえば、偶然の産物がこの作品だと。少なくとも最初から計画的に書いていたら、こんなふうにはならないだろう。何とかつじつまを合わせたら出来ちゃった、みたいな作品。

怪作と言えば怪作なんだろうなあ。小林晉の解説が素晴らしいことは、間違いない。