平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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シリル・ヘアー『自殺じゃない!』(国書刊行会 世界探偵小説全集32)

自殺じゃない! 世界探偵小説全集 (32)

自殺じゃない! 世界探偵小説全集 (32)

マレット警部が旅先のホテルで知り合った老人は、翌朝、睡眠薬の飲み過ぎで死亡していた。検死審問では自殺の評決が下ったが、父親が自殺したとは信じられない老人の子供たちとその婚約者は、アマチュア探偵団を結成。独自に事件の調査に乗り出した。やがて、当日、ホテルには何人かの不審な人物が泊まっていたことが明らかにされていくが……。英国ミステリの正統を受け継ぐ本格派ヘアーの香り高いヴィンテージ・ミステリ。(粗筋紹介より引用)

1939年、発表。2010年3月、邦訳刊行。



『法の悲劇』で有名なシリル・ヘアーの第三長編。名家の一族の一人であるレナード・ディキンスンが宿泊先のホテルで死亡。睡眠薬の飲み過ぎによる自殺と評決されたが、納得いかない息子スティーブンと娘アン、アンの婚約者であるマーティン・ジョンスンは異議を申し立てる。レナードは25,000ポンドの保険金を掛けていたものの、自殺では支払われない。そのため三人は素人探偵団を結成し、事件の真相を探る。

事件の真相を探るうちに、ホテルの宿泊客が関係者ばかりであり、醜聞が明らかになっていく展開は読んでいて楽しい。そして皮肉たっぷりの事件の真相と結末は、さすが英国ミステリといいたくなるようなものだ。やはり書き方が巧いな。

ネタバレしないと感想が書きにくい作品だが、一読の価値あり。