平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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海堂尊『チーム・バチスタの栄光』(宝島社)

チーム・バチスタの栄光

チーム・バチスタの栄光

東城大学医学部付属病院は、米国の心臓専門病院から心臓移植の権威、桐生恭一を臓器統御外科助教授として招聘した。彼が構築した外科チームは、心臓移植の代替手術であるバチスタ手術の専門の、通称“チーム・バチスタ”として、成功率100%を誇り、その勇名を轟かせている。ところが、3例立て続けに術中死が発生。原因不明の術中死と、メディアの注目を集める手術が重なる事態に危機感を抱いた病院長・高階は、神経内科教室の万年講師で、不定愁訴外来責任者・田口公平に内部調査を依頼しようと動いていた。壊滅寸前の大学病院の現状。医療現場の危機的状況。そしてチーム・バチスタ・メンバーの相克と因縁。医療過誤か、殺人か。遺体は何を語るのか……。

栄光のチーム・バチスタの裏側に隠されたもう一つの顔とは。(粗筋紹介より引用)

2005年、第4回『このミステリーがすごい!』大賞受賞。応募時タイトル『チーム・バチスタの崩壊』。加筆のうえ、2006年2月、単行本刊行。



人気作家、人気シリーズのデビュー作を読むというのは何を今頃という感もあるが、手に取ったのが今頃なのだから仕方がない。

よくよく考えてみると見え見えのトリックが使われているのだが、終盤近くになるまで全く想像だにしなかった。ということは、作者の術中にはまっていたのか。リーダビリティもあるし、キャラクターの色付けも抜群。登場人物の描き分けもできているし、言うことないだろう。現役医師らしい問題点の指摘も悪くない。医学的な内容がやや説明口調になっている部分もあるが、それは些細なこと。結末まで楽しめましたよ、本当に。

これで、結末がもう少し意外性のあるものだったら、傑作といえたと思う。残念ながら、最後はあまりにもパターン化された終わり方だった。一番肝心なところでトーンダウンしてしまったところが、非常にもったいない。動機なんかも、もう少し違ったものが欲しい。無いものねだりかもしれないが、序中盤がよかった分、お見事といえるラストが読みたかった。

まあ、新人の作品にそこまでの完成度を求めるのは酷だろう。面白かったことに間違いはないのだから。ただ、白鳥というキャラクター、二作目を読みたいと思わせるキャラクターじゃないよな。もう少し後味がよいキャラクターに仕立ててほしかった。