平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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真梨幸子『孤虫症』(講談社文庫)

孤虫症 (講談社文庫)

孤虫症 (講談社文庫)

「週に三度、他の男とセックスすることを習慣にして」いる主婦・麻美。彼女の不倫相手が、次々と身体全体に瘤のようなものを作って原因不明の死を遂げる。彼女自身の肉体にも異変が起こる。女同士の憎悪や嫉妬、母娘で繰り返される愛憎劇。一見幸せな主婦の誰にも言えない秘密とは……。(粗筋紹介より引用)

2005年、第32回メフィスト賞受賞。同年4月、単行本刊行。2008年10月、講談社文庫化。



正直言って、粗筋紹介を見ただけで読む気が失せていた。自分の快楽だけで浮気をしまくるというのは男性女性問わず、苦手なのである。麻美の場合、もしかしたら病気なのかもしれないが、どっちにしても苦手なことには変わりない。メフィスト賞でなかったら、間違いなく手に取らなかっただろう。それでも我慢して読み進めていたが、麻美の言動に一つ一つ苛立ち、ページをめくるのがとても苦痛だった。そのうちに男を取り換えまくった母親は出てくるし、麻美の妹・奈未はミュージシャンと結婚していながらも義兄・隆雄に恋をしているし……。何なんだ、この淫乱な関係は、などと辟易していたのだが、麻美が失踪し、娘・美沙子が事故死してから物語は別の方向に動き出す。

いやあ、読んでいる間は不快感だらけ。とにかく我慢して読むしかない。そこから先は意外な展開が待ってはいるものの、結局は後味の悪い終わり方。とことん、読者を嫌にさせる小説である。ここまでひどい(誉め言葉)小説も珍しい。こういうものが好きな人にはたまらないのだろうな、とは思ってしまうが、私は嫌いだ。ただ、人をここまで不快にさせるだけの筆力はある小説である。

 まあ、二度と読むことはないだろう。読者を選ぶ作家ではある。それもまた、一つの才能なのだろう。

メフィスト賞もがんばって読もうとしているのだが、苦手なジャンルが多く、残っている作品を手に取ろうと思わないんだよな……。