平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

古野まほろ『天帝のはしたなき果実』(講談社ノベルス)

天帝のはしたなき果実 (講談社ノベルス)

天帝のはしたなき果実 (講談社ノベルス)

90年代初頭の日本帝国。名門勁草館高校で連続する惨劇。子爵令嬢修野まりに託された数列の暗号を解いた奥平が斬首死体となって発見される。報復と解明を誓う古野まほろ吹奏楽部の面子のまえで更なる犠牲者が! 本格と幻想とSFが奇跡のように融合した青春ミステリ。第35回メフィスト賞受賞作。(「BOOKデータサービス」より引用)

2006年、第35回メフィスト賞受賞。2007年1月、講談社ノベルスより刊行。



まず817頁という厚さに手をひきそうになる。裏を見ると、宇山日出臣からの最後の贈り物にして最大の挑発、とか虚無なる青春への供物などという有栖川有栖の惨事、じゃないや、賛辞を読むと、もう読む気が無くなる。作者の言葉に「一 本格劇であること、二 変格劇であること、三 青春劇であること、四 幻想劇であること、五 空想科学劇であること、六 読者への挑戦状其の他の古典的探偵劇に係る事項として内務省令を以て定むるものを含むものであること」などと書かれると、完全に読む気を無くした。しばらく放っておいたが、ちょっと前にインターネット上で作者が話題になったので、手に取ってみた。

しかし、意味があるとは思えない過剰なルビ、会話文なのに過剰な括弧で辟易し、高校生とは思えない会話に呆れかえる。説明もないまま将校が出てきて、ここはどんな舞台なんだと首をひねる。どうやらパラレルワールドの世界らしい。そして止めは、意味があるとは思えないペダンティックな表現。小栗虫太郎なら衒学趣味って言える程度の内容は保っているけれど、作者の場合ただ放り投げて無理矢理飾り立てているだけの装飾過多。しかも多すぎて作品が支えきれず、倒れ掛かるような状態。とてもじゃないが、こんな調子では読む気が起きない。メフィスト賞読破という目標じゃなかったら、投げ捨てていたところだ。

200頁ぐらい我慢してようやく殺人事件が起きるけれど、登場人物は皆冷静。いいのかね、本当にこれで。死体に慣れているとしか思えない。パラレルの世界はそんな世界なのか。606頁で読者への挑戦状。それから高校生たちによる推理合戦。最後に殺人事件が起き、そして繰り広げられるわけのわからない展開。ええっと、どこに褒める要素があるのだろうか。清涼院流水まで行けばギャグになるだろうけれど、多分作者は真面目なんだろうなあ。

悪いけれど、時間の無駄だった。しかしこれがシリーズ化しているのだから、多分面白いところがあって、それを読み取れない自分が悪いのだろうなあ。