平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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有栖川有栖『インド倶楽部の謎』(講談社ノベルス)

前世から自分が死ぬ日まで―すべての運命が予言され記されているというインドに伝わる「アガスティアの葉」。この神秘に触れようと、神戸の異人館街の外れにある屋敷に“インド倶楽部”のメンバー七人が集まった。その数日後、イベントに立ち会った者が相次いで殺される。まさかその死は予言されていたのか!? 捜査をはじめた臨床犯罪学者の火村英生と推理作家の有栖川有栖は、謎に包まれた例会と連続殺人事件の関係に迫っていく!(粗筋紹介より引用)

メフィスト』連載。2018年9月、刊行。



13年ぶりとなる国名シリーズ。まさか出るとは思わなかった。まあ、国名シリーズとはいっても、他の火村シリーズとそんなに違いがあるわけでもないのだが、やはり読まないわけにはいかない。

今回は、「アガスティアの葉」に出てくる予言がストーリーの核となる。当然、本物であるわけがないので(苦笑)、どういう狙いがあるのかと思っていたのだが、こういう展開になるのかあ、と素直に感心。ただ、面白いかどうかと聞かれると、話は別かなあ。前世の話も含め、あまりにも仕組まれすぎという感が否めない。仕掛けのスパンや動機も含め、共感できない部分が多いせいか、あまり楽しむことができない。連続殺人に至っても同様。こんなことで犯行に手を染めてしまう犯人にちょっと同情してしまった。地味な登場人物、地味な展開、地味な終わり方だが、犯人まで導かれるロジックは悪くないか。ちょっとした親子ものになっている点は、読後感良し。

全編に散りばめられる過去作言及は、久しぶりの国名シリーズということもあっての読者へのプレゼントかな。作者自身も読み返していたりして(苦笑)。火村と有栖川の関係も含め、今まで国名シリーズを待ってくれていた読者へのサービス作品といっていいだろう。