平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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東川篤也『探偵部への挑戦状 放課後はミステリーとともに2』(実業之日本社)

探偵部への挑戦状 - 放課後はミステリーとともに2

探偵部への挑戦状 - 放課後はミステリーとともに2

私立鯉ヶ窪学園高等部二年生で、探偵部副部長の霧ヶ峰涼が様々な事件に遭遇し、謎を解こうとする。『放課後はミステリーとともに』の続編。

体育祭二日前の十月某日、親友の高林奈緒子と帰宅しようと校舎の脇を歩いていた涼は、衝撃音と男の悲鳴を耳にする。中庭に駆け付けてみると、同学年の三人の男子が、渡り廊下のコンクリートの上で仰向けの状態で寝そべっている自称高校陸上界のスーパースター、足立駿介を見ていた。足立は誰かに殴られたらしいが、記憶が飛んでいた。足立は運動靴を履いていたが、足跡が無かった。当然三人の男子が怪しかったが、三人とも否定。凶器は見当たらず、三人には犯行は不可能と思われた。「霧ヶ峰涼と渡り廊下の怪人」。

学園祭でお好み焼屋の屋台を開いていた探偵部。部長の多摩川流司、ナンバー2の八橋京介とともに放課後に非常階段の踊り場で反省会をしていた涼は、瓢箪池でプレイボーイの三年生が女の子に棍棒のようなもので殴られるところを目撃する。プレイボーイはそのまま池にダイブ、女の子はそのまま逃げた。プレイボーイは軽傷だったが、殴ったのは知らない女だと話す。保健室に連れて行ったプレイボーイは、殴られたのではなく、切り付けられたのだと証言し、保険医も眉間の傷を見てそれを肯定。目撃内容と違うのはなぜか。「霧ヶ峰涼と瓢箪池の怪事件」。

学園祭二日目。多摩川と八橋はミスコン見学に行ったため、屋台にいたのは涼と、応援から戻ってきた同じ探偵部の赤坂通。結局二人もミスコンに行こうと、赤坂が持っていたチラシを基に屋上に行ったら、待っていたのは同じ二年で鯉ヶ窪学園ミステリ研究会の部長、大金うるる。大金は「ミステリ・コンテスト」と称し、密室殺人事件の謎をもって涼に挑戦してきた。「霧ヶ峰涼への挑戦」。

地学教師・池上冬子と一緒の帰宅中、涼は教会の庭で神父が倒れているのを発見した。殴られたようだが、雨上りの地面には、池上と涼を除くと、神父の足跡しかなかった。UFO好きの池上は、宇宙人襲来と騒ぎ出す。「霧ヶ峰涼と十二月のUFO」。

映画部へDVDを返しに行った時、部員で同学年の加藤から、部長卒業記念の映画の撮影に代役として出演を依頼された涼。撮影中、ビデオのバッテリが切れ、取りに帰った一年生部員が、40インチテレビが消えていることを報告。先ほど涼がDVDを返しに来たときは、確かにあったはずなのに。テレビは壊され、焼却炉に捨てられていた。ところが周囲の証言から、犯行予想時間に映画部からテレビを持ち出した人物がいないことが分かった。「霧ヶ峰涼と映画部の密室」。

赤坂に誘われ、探偵部の活動を行うと空家に誘われた涼。テーブルの上にあった珈琲には薬が盛られており、眠ってしまった。目を覚ますと、目の前にいたのは大金うるる。隣の部屋では、赤坂が包丁で刺されて殺されていた。雪が積もった外にあったのは、涼と赤坂の足跡と、うるるたちが乗ってきたときの自転車痕のみ。うるるからの二度目の挑戦状は、雪の密室。「霧ヶ峰涼への二度目の挑戦」。

三月、卒業生から先生たちへの伝統の「お礼参り」のシーズン。涼は第二校舎で学生服の男子が体育教師の柴田を棍棒で殴り、池に突き落とすところを目撃する。慌てて駆け付け、柴田を救出すると、近くから言い争いの声が。マスク姿の男子生徒がぶつかってきたと、茶髪ヤンキー風の女子生徒に文句を言われていた。この男子生徒が犯人かと思われたが、棍棒を持っていない。そして現場の周辺にも棍棒は無かった。消えた凶器はどこへ行ったのか。「霧ヶ峰涼とお礼参りの謎」。

2011〜2013年、月刊『ジェイ・ノベル』に不定期掲載。2013年11月、ソフトカバーで刊行。



すっかり人気作家となった東川篤哉の、霧ヶ峰涼シリーズ第二弾。前作に引き続き、本作でも涼は探偵役にはなれず、狂言回しで終わってしまう。本作では本シリーズの探偵部三人も登場。なぜ今まで遭遇しなかったか、見事なくらいギャグで逃げ切るその開き直りには素直に感動。おまけに、時の流れ(実際の執筆では10年経っている)もギャグにしてしまうところは、ユーモアミステリの面目躍如(いや、違う)。

日常の謎に、ギャグ混じりのトリックも入った解決。ユーモアミステリとしてお手軽かつ楽しく読める。お手軽すぎて物足りない、という読者もいるだろうが、そこは好みの問題。時間を潰すにはちょうどいい、作品集である。逆に言えば、それ以上は特になし。

ところで、部長たちは卒業し、涼たちも進級するようだが、シリーズはどうなっているのだろう。