平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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逢坂剛『相棒に気をつけろ』(新潮社 新潮エンターテインメント倶楽部)

「いやはや、とんでもない女と組んだものだ」ハッタリと出任せには俺も自信があるが、相方は一枚も二枚も上手。ヤクザの香典はパクるわ、地上げ屋の眼前でストリップショウを企むわ、欲深い奴らを手玉にとって涼しい顔。「四面堂遥」この女、タダモノではない……。要領よし、逃げ足早し、正義感少しあり、腕力なし。世渡り上手の世間師コンビが大活躍するウィットたっぷりの痛快短編集。(粗筋紹介より引用)

「いそがしい世間師」「痩せる女」「弦の嘆き」「八里の寝床」「弔いはおれがする」の5編を収録。『小説新潮』1998年〜2001年掲載。2001年8月、単行本刊行。



主人公の「俺」は、詐欺師。各作品で会社も名前も違うのだから、シリーズとわからず雑誌で読むと、何が何だかわからないところがあったんだろうなあ。

ユーモアを含んだコンゲームものだが、はっきり言って犯罪じゃないか、という部分もあるので、必ずしも全編が爽快感を得られるわけではない。まあ、作者もその辺は十分わかっているし、男と女の騙し騙されを楽しむ作品だから、気軽に読めばいいと思う。

やられた、と思うのは「痩せる女」。融資を得るために女が15kgダイエットの挑戦を受けるものだが、まさかそこでそれを持ってきますか。

いい話かと思ったら、最後はそう流れるの、みたいな「八里の寝床」。地上げ屋から依頼され、唯一居残っている居酒屋を追い出そうとする話だが、最後は見事逆転。それにしても男がちょっと可哀想。

「弔いはおれがする」は、男が世話になった組長の香典を遙が盗んだので、取り返す話。単行本の最後らしく、ドンパチ派手な作品。さすがに盛り上げ所を知っている。

いくつもの顔を持つ逢坂剛だが、こういう作品もあると知って驚く人もいたのではないか。それにしても、厚すぎる長編や時代物ばかりでなく、こういう路線ももっと書いてほしいものだが。