- 作者: 貴志祐介
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2012/04/25
- メディア: 文庫
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『野性時代』2008〜2011年掲載。2011年7月、単行本刊行。2012年4月、文庫化。
3日前から行方不明だった葬儀社の社長は、自らの山荘で、書斎のドアを含む壁に貼られた白幕に背中をもたせかけて座ったまま死んでいた。末期癌を宣告され、遺体の前に置かれていたガラステーブルには注射器とアンプル、さらに遺書が置かれていた。明らかに自殺の状況だったが、疑問に思った司法書士の日下部は、青砥純子弁護士と榎本径に現場を見てもらうことにした。「佇む男」。
刑務所から出所したばかりの元プロ泥棒、会田愛一郎は5年ぶりに姉の家を訪れた。姉は3年前に亡くなり、姉の再婚相手が出迎えた。引きこもりの高校生の甥の部屋を、帰宅したばかりの中学生の姪が明けようとしたが、鍵がかかっている。義兄の言葉によると、今日、サムターン錠を付けたとのこと。甥は部屋に鍵をかけ、目張りをしたうえで練炭自殺をしていた。しかし甥に自殺の動機はない。会田は、財産目当てで義兄が殺害したと、純子たちに相談した。「鍵のかかった部屋」。
結婚直前である公立高校野球部顧問の杉崎は、練習中に時間を作り、欠陥住宅の新居で、家を建てた伯父で工務店の社長を、密室の中で殺害する。家が傾いているため、玄関の扉は内側からしか、しかもハンマーを使わなければ閉めることができない。台所の窓だけは鍵がかかっていなかったが、家が傾いて開閉が不可能。死体がある部屋は、荷重がかかってびくともしないうえ、危険の張り紙とガムテープが張られていて、開閉が不可能。アリバイがあるうえ、密室の謎がとかれない限り、安心だ。「歪んだ箱」。
「犬のみぞ知る Dog Knows」事件で座長が殺され看板俳優が逮捕された劇団「土性骨」は、名前を「アース、セックス&ボーン」、略して「ES&B」と名前を変えた。座長が残した劇場を「
ほとんど密室トリック新作お披露目となった本シリーズ。よくぞまあ、ここまで考え付くよなという意味では感心するが、それ以外では特に感じることは無し。三編はまともな密室なのに、最後の「密室劇場」は設定があまりにもバカバカしい。これこそ、トリックのための舞台としか言いようがない。まあ、トリックが好きな人にはそれでいいのだろうが。純子と榎本に、もう少しドラマがほしい。
できれば長編で、もう少しまともな作品を読んでみたい……って、そういえば長編出ていたな。