平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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西村京太郎『消えたタンカー』(光文社文庫)

消えたタンカー (光文社文庫)

消えたタンカー (光文社文庫)

インド洋上で、原油を満載した50万トン・タンカーが炎上、沈没した。宮本船長以下6名だけは沈没寸前、無事脱出。が、残り26名の生死はもとより、炎上、沈没の原因も不明のまま、捜査は打ち切られた。ところが、宮本船長が朝の散歩中に変死。その死に不信を抱き、背後を探ろうとした十津川警部のもとに、一通の脅迫状が。雄大なスケールで描く海洋ミステリー。(粗筋紹介より引用)

1975年4月、カッパ・ノベルスより刊行。1985年5月、光文社文庫化。



トラベルミステリーの第一人者、西村京太郎も、当時は海洋ミステリーを多く書いていた。そして十津川警部は、海洋ミステリーを中心とした謎に立ち向かう第一人者だった。西村京太郎はこの後、『消えた○○○』というタイトルの作品を数冊執筆する。

インド洋上で50万トン・タンカーが炎上、沈没するという派手な話の後、生き残った船長以下が立て続けに殺されるというショッキングな話。十津川警部が事件の謎を追ううちに、いつしかタンカー消失の謎を追うこととなる。

西村京太郎らしい派手で大掛かりなトリックを駆使した作品。凄いとは思うのだが、本当にこんな動機が成立するのか、ライフルで連続殺人が可能なのかなど、首をひねるところも満載。それをも強引に押し通す力が、当時の作者にはあったのだろうなと思ってしまう。

そういえば西村のこのあたりを読んでいないな、と思って手に取ってみたが、確かに作者の力を感じる作品ではあった。ただ同時に、大掛かりすぎる荒唐無稽さが一般受けしそうもない作品だよなという気もした。