平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ピエール・ルメートル『傷だらけのカミーユ』(文春文庫)

カミーユ警部の恋人が強盗に襲われ、瀕死の重傷を負った。一命をとりとめた彼女を執拗に狙う犯人。もう二度と愛するものを失いたくない。カミーユは彼女との関係を隠し、残忍な強盗の正体を追う。『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』の三部作完結編。イギリス推理作家協会賞受賞、痛みと悲しみの傑作ミステリ。(粗筋紹介より引用)

2012年、発表。2015年、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞受賞。2016年10月、邦訳刊行。



『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』に続くカミーユ警部シリーズ最終作。時系列的には、『悲しみのイレーヌ』で愛妻イレーヌを亡くしてから5年後、『その女アレックス』直後となる。

あのカミーユに恋人ができたということでよかったねと思っていたら、強盗事件に巻き込まれる。しかも犯人に付け狙われるという展開。事件はわずか3日間だが、衝撃的な展開が続く。何もここまでカミーユをいじめなくても、と作者を批判したくなった。

今回はデッドリミットのサスペンス要素が強く、事件の背景は過去の作品と比べるとわかりやすい。それでもシリーズで読んでいるせいか、あっと言わされてしまうのは、作者の筆の巧さだろう。

本作はカミーユの暴走ぶりがひどく、ルネの活躍が今ひとつだったのが残念。アルマンは既に癌で亡くなっているし。過去の登場人物が密接に絡む点も有り、本作品については前作、前々作を読んでいないと、面白さが半減してしまう。本作を書くために、『悲しみのイレーヌ』を書いたんじゃないだろうかと思うぐらいである。その点を除いたら、十分に楽しむことができた。シリーズ最終作にふさわしい力作。それにしても最後は泣けるなあ。