平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ジェフリー・ディーヴァー『ボーン・コレクター』(文春文庫)

ボーン・コレクター〈上〉 (文春文庫)

ボーン・コレクター〈上〉 (文春文庫)

ボーン・コレクター〈下〉 (文春文庫)

ボーン・コレクター〈下〉 (文春文庫)

ケネディ国際空港からタクシーに乗った出張帰りの男女が忽然と消えた。やがて生き埋めにされた男が発見されたが、地面に突き出た薬指の肉はすっかり削ぎ落とされ、女物の指輪が光っていた……女はどこに!?  NY市警は科学捜査専門家リンカーン・ライムに協力を要請する。彼は四肢麻痺でベッドから一歩も動けないのだが……!?(上巻粗筋より引用)

連続殺人鬼ボーン・コレクターは被害者の周辺に、次の犯行現場と殺害手口を暗示する手掛かりを残しながら次々と凶悪な殺人を重ねてゆく。現場鑑識にあたるアメリア・サックス巡査は、ライムの目・耳・手・足となり犯人を追う。次に狙われるのは誰か? そして何のために……。ジェットコースター・サスペンスの王道を往く傑作。(下巻粗筋より引用)

1997年、発表。1999年、ネロ・ウルフ賞受賞。1999年9月、邦訳単行本刊行。2003年5月、文庫化。



大ヒットしているリンカーン・ライム・シリーズの第1作。『ウォッチメイカー』が面白かったから、第1作から読んでみようと思って手に取ったけれど、確かに面白いわ、これ。評価が高いのも納得である。

犯人が残したわずかな手がかりから、次の犯行現場を当てていくライム。反発を覚えながらも、ライムの指示に従うアメリア。あまりにも作りすぎなキャラクターだと思いつつ、いつしか物語に引き込んでいく作者の力に感動。本当にここまでピタリピタリと当てられるか、という疑問すら置いてけぼりにし、読者を結末まで引っ張っていく、そのジェットコースターぶりには感動すら覚える。

主人公たる二人の造形がここまで作られると、他の人物はおざなりになってしまいがちだが、本書ではそんなことは無い。介護士のトムも、NY市警鑑識課員のメルも、捜査主任のロン・セリットーもきっちりとした造形がなされている。さらに捜査の主導権を握ろうとするフレッド・デルレイもまた、非常に憎々しい。

ただ、犯人であるボーン・コレクター自身が今一つだった。このような連続事件を引き起こすには、動機が少々弱いと感じた。ここだけはもう少し、書き込みがほしかったところ。

「息もつかせず」という慣用句がぴったりくる傑作。これだけの登場人物の造形を作ってしまえば、確かに続編を作りたくなる気持ちは分かる。時間があれば、その他の作品も読んでみるつもりである。