平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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岡嶋二人『コンピュータの熱い罠』(光文社文庫)

コンピュータの熱い罠 (光文社文庫)

コンピュータの熱い罠 (光文社文庫)

夏村絵里子はコンピュータ結婚相談所のオペレータ。データを見たいという女性の申し出を断った翌日、その女性が殺された! 疑問を抱いた絵里子はデータを調査、システム上で何かが動いていることを知る。プログラムに隠された巨大な陰謀。そして次の犠牲者が……!?

情報化社会に警鐘を鳴らす、著者得意のハイテク・サスペンス!(粗筋紹介より引用)

1986年5月、カッパノベルスより書き下ろし刊行。1990年2月、文庫化。



久しぶりに手に取った岡嶋作品。代表作はほぼ読んでいるが、それなりに好評だった作品はほとんど読んでいない。ということで、家にあった一冊を取り出してみた。
当時のハイテクを駆使した、井上泉色が濃厚な一冊。フロッピーディスクや音響カプラなどはさすがに時代を感じるが、取り扱われているデータの使用方法や結婚問題は現在でも十分通用する内容。逆に言えば、時代を先取りしすぎた作品だったかもしれない。

当時のコンピュータ技術がわからない人でも説明が過不足無く入っているのでわかりやすいし、物語の流れに沿った書き方になっているので、読者の興味を削ぐようなことが無いのもさすが。少しずつ謎が明かされると、さらに継の事件が起きて読者の興味を引き続ける書き方も、手慣れたもの。長さも手頃だし、一気に読み終えることができる。

問題は、ヒロインに魅力が無いことかな。ちょっと間抜けすぎるし、殺された人も含め、メモぐらい残さんのかい、とは言いたくなる。まあ、最後のエピソードはちょっと格好良かったが。

割と地に着いた題材のトリックを使っていたためか、今読むと古くさいところもあるのは仕方が無い岡嶋作品だが、中身を取ってみれば、今でも十分読み応えがある。当時は職人色が強かった岡嶋二人だが、ミステリブームの頃に出ていれば、もっと売れっ子になっていたのかもなあ、と当時考えていたことを思い出してしまった。