平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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高嶋哲夫『イントゥルーダー』(文春文庫)

イントゥルーダー (文春文庫)

イントゥルーダー (文春文庫)

25年前に別れた恋人から突然の連絡が。「あなたの息子が重体です」。日本を代表するコンピュータ開発者の「私」に息子がいたなんて。このまま一度も会うことなく死んでしまうのか……。奇しくも天才プログラマーとして活躍する息子のデータを巡って、「私」は、開発原発がからまったハイテク犯罪の壮絶な渦中に巻き込まれていく。(粗筋紹介より引用)

1999年、サントリーミステリー大賞及び読者賞受賞作。



ITや原発など、ハイテク関連を先取りしたような作品。日本原子力研究所研究員という作者の経歴を見れば納得なのだが、結局自分の持っている知識を組み合わせて作品を作ったという印象しかない。色々と過去を持った割には登場人物が単なる人形にしか見えてこないのはまだしも、その行動原理までもが人形のようにカクカクとしか動かないのはどうか。特に主人公の家族が傍観者状態になっているのは、もう少し何とかしてもよかったのではないかと思う。作品の内容としては、作者自身の過去を否定するなよ、と言いたい(笑)。まあそれはともかく、単純な裏しかなかったのはちょっと幻滅。もう少しひねりがほしかった。それと、中越沖地震などがあっても、日本の原発そのものがおかしくなったわけじゃないんだよ、と一応言っておく。

結局題材だけの作品。選び方は悪くなかったと思うけれどね。