- 作者: 藤原伊織
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/12/01
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新規クライアントの広告コンペに向け、辰村や戸塚らは全力を傾注する。そんな中、3通目の脅迫状が明子の夫の許に届いた。そして勝哉らしき人物が上野近辺にいることを突き止めた辰村は、ついに行動を起こす! 広告業界の熾烈な競争と、男たちの矜持を描くビジネス・ハードボイルドの結末は?(下巻粗筋紹介より引用)
『週刊文春』2003年11月6日号〜2004年11月23日号連載。2005年6月、文藝春秋より単行本刊行。2006年12月、文庫化。
電通社員だった藤原伊織にとっては、まさに自分のフィールドでの作品ということもあり、広告をめぐる争いについてはリアリティがある。下手な作家ならここで専門的な内容をずらずら並べそうなところだが、さすがにそんな無様なまねはしないばかりか、スピード感にあふれるから、読んでいて目が離せない。一方では過去の秘密に絡む脅迫事件が出てきて、昔惚れた女と久しぶりの再会。酔っぱらいでヘビースモーカーな無頼の主人公なのに、やっぱり人間として魅力があるから、そばにいると惚れるんだろうね。ずるいというしかない。どんなに損なことでも己の美学に誠実だし、頭も切れるし、部下のこともしっかりと見ているから、男でも惚れてしまうよ、これは。
『テロリストのパラソル』と世界が共通しており、ある登場人物が作中に登場。読者サービスの部分があるのは否定しないだろうが、こればっかりはこの人物が必要と判断してのことだろう。
それにしても、タイトルもいい。「シリウス」の意味を知ったら、泣けてきた。エンディングまでの流れも巧いとしか言いようがない。下種な人物をここまでリアルに描いてしまうところも流石だ。
他の登場人物も魅力的だし、セリフの言い回しなどの世界観も、まさにハードボイルド。やはりすごい作家だと改めて認識してしまう作品。ただ、女性が読んだらどう思うのだろう、という気もする。