平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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横山秀夫『64(ロクヨン)』(文藝春秋)

64(ロクヨン)

64(ロクヨン)

D県警察本部警務部秘書課調査官(広報官)の三上義信警視は、娘のあゆみが家を出たまま行方不明の状態であり、妻の美奈子と心配する毎日。46歳で20年ぶりに戻った広報室では、脇見運転で老人をはねて重傷を負わせた主婦の実名を伏せて発表したことで、記者クラブと戦争状態になっていた。口の重い刑事部と、情報を求めるマスコミとの板挟みに悩む毎日の三上。そんなある日、赤間警務部長は、警察庁長官が視察に来るので、14年前の誘拐事件の被害者宅を訪れるよう渡りをつけてほしいと言われた。14年前、昭和最後のわずか7日間で発生した誘拐事件は今も未解決で、D県警の喉仏に刺さった骨のような存在であり、県警内部では今も「64(ロクヨン)」と呼ばれていた。一方、同じ警務課で同期の二渡調査官が、64に携わって辞めた刑事のメモを探して警察内部を動き回っていた。彼の目的は何か。そしてD県警に疑心暗鬼の嵐が吹き荒れる。

別冊文藝春秋』251(2004年5月号)、253〜260、262〜263(2006年5月)号掲載。全面改稿の上、2012年10月、単行本発売。



いわゆる「D県警シリーズ」の一冊。横山自身の作品としても、『震度0』以来7年ぶりとなる。本作品も改稿に改稿を重ね、当初は2009年に発売するはずが、作者自身が納得いかず、結局ほとんど書き直したという経緯がある。週刊文春、このミスいずれも1位を獲得。

ようやく出た一冊だったが、読むのは今頃。毎度のパターン。

それにしても、前半は重い。ページが重い。三上があまりにも空回りしていて、さすがに同情してしまう。元々警察とマスコミなんて持ちつ持たれつだっただろうに、今では腹芸なんてできない記者が多いんだろうなあ。途中からは物語が動き出して、ここからは俄然調子が良くなる。それでも三上の空回り自体は変わっていないが。それでも、仕事を見る上司がいるってことを書きたかったんだろうなあ。

対立中の事件勃発という展開にも驚いたが、この真相がさらに強烈。これには思わず唸ってしまった。こういう話の持って行き方もあるんだね、うん。

元新聞記者だった作者だから書けた話だろうなあ、とは思うが、逆に誘拐事件のみのストーリーも読んでみたかった気がする。ちょっと重すぎて、胃がもたれてしまったかな。