平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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伊佐千尋+渡部保夫『日本の刑事裁判 冤罪・死刑・陪審』(中公文庫)

日本の刑事裁判―冤罪・死刑・陪審 (中公文庫)

日本の刑事裁判―冤罪・死刑・陪審 (中公文庫)

被疑者はなぜ虚偽の自白をするのか、国家は人を処刑しうるのか、日本で陪審制度が嫌われる理由は……。三十年間裁判官を務めた渡部氏と、復帰前の沖縄で陪審員の経験を持つ伊佐氏が、誤審や死刑制度など、日本の刑事裁判が本質的に抱える後進性を、具体的な事件をあげながら徹底的に論じた対談集。(粗筋紹介より引用)

『諸君!』1988年3月号から1989年2月号まで連載。『病める裁判』というタイトルで1989年、刊行。1996年、文庫化。



日本の刑事裁判が本質的に抱える後進性を、具体的な事件を挙げながら徹底的に論じた対談集。30年近く前の対談であるから、今読むと古い内容も多い。裁判員制度のようにすでに市民が裁判に参加するようになっている。国選弁護人が被害者の段階で付くようにもなっている。彼らに言わせれば、少しは前進したと言えるのだろう。それでも裁判に対する不信は今でも根強い。もっとも、弁護士に対する不信の方がもっと根強いと思われるのだが、こうなるとは二人は思っていなかっただろう。

豊富な事例を基に日本の刑事裁判に対する問題点を指摘しており、対談形式であることから非常に読みやすい。まとまりに欠けるきらいはあるが、テーマごとの対談であるため、それほど苦にならない。

ここで語られている内容は、あくまで一つの見方でしかない。それでも一つの見方を知ることは重要。ここにはそれがわかりやすく述べられている。学者の堅苦しい、遠回しな言い方とは別である。読んでみて損はない。