平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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大沢在昌『絆回廊 新宿鮫X』(カッパ・ノベルス)

絆回廊 新宿鮫X (カッパ・ノベルス)

絆回廊 新宿鮫X (カッパ・ノベルス)

巨軀。恐るべき暴力性と存在感――。やくざすら恐れる伝説の一匹狼が「家族を引き裂いた警官を殺す」という恨みを胸に、22年もの長期刑から解き放たれ、新宿に帰ってきた。事件を未然に防ぐべく捜査を開始する新宿署刑事・鮫島。しかし次々とおぞましい殺人事件が発生、鮫島自身も謎の集団の襲撃を受ける。大男の標的は、誰だ? 絡み合う人々の絆が迎える結末とは? シリーズ最高の緊張感と衝撃! 待望のノベルス化! (粗筋紹介より引用)

2011年6月、ハードカバーで刊行。2012年、日本冒険小説協会大賞受賞。2013年8月、ノベルス化。



鮫島がベテランの売人、露崎と接触するところから物語は始まる。警官を殺すと、拳銃を探す男。男が持ち出した暴力団は、15年も前に潰れたところだった。そして週刊誌の記者が鮫島へ、晶にクスリ絡みの内定が入っていることを知らせる。鮫島の捜査は徐々に核心に迫り、男の標的は鮫島の上司である新宿署安全衛生課課長の桃井であった。

真壁、間野や香田との関係にけりがつき、本作では鮫島の最大の理解者である晶と桃井との関係に一つの終止符が訪れる。それにしても、「絆回廊」とは絶妙なネーミングだ。

「絆」と言えば、新宿に帰ってきた樫原茂と、バー「松毬」の笠置との関係も、奇妙なものだ。薄いつながりでありながらも、ここまで深く相手を想う関係という描写が実にうまい。本作品は色々な「絆」が絡み合い、最後の感動までつながっていく。

大沢在昌ってやっぱりうまいなあと思わせる傑作。さて、次の作品はどうなるのだろう。