野獣の刺青(タツトウー)―三菱銀行42時間12分密室のドラマ! (カッパ・ノベルス―ドキュメントシリーズ)
- 作者: 福田洋
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 1982/06
- メディア: 新書
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1982年6月、光文社カッパ・ノベルスより書き下ろし刊行。
三菱銀行人質事件は、警官2名行員2名が射殺されたこと、犯人が行員や客を人質に42時間12分銀行内に籠城したこと、犯人射殺による事件解決といった衝撃度の高い事件であり、今でも覚えている人は多いと思う。本書は犯人・梅川昭美が事件を起こすまでの生い立ちと、人質事件の全貌が描かれている。作者である福田洋は、「(前略)三菱銀行人質強殺事件は、現代社会の投影としての犯罪と犯罪者を描くには、格好の素材と思われ、創作意欲をそそられたのである。困難な取材のなかで、報道されなかった
事件そのものが衝撃的であったことや、梅川が15歳の時に強盗殺人事件を起こしていたことなどの破滅的な人生を歩んできたことなど、被害者には申し訳ない言い方であるが題材としては申し分ないものであり、手掛ける方としてもやりがいのある作品であっただろう。特にこの事件は犯人射殺という形で終わったことから、裁判でその事件の全貌が語られるということもなく、公に出ているのは警察発表のみという状況である。作者は綿密な取材から、事件の全貌へ肉薄し、「死者に語らせる」ドキュメントを作り出すことに成功している。
本書は1996年2月28日、現代教養文庫から『三菱銀行人質強殺事件』のタイトルで再刊される。
どうでもいいけどさ、大藪小説の主人公にあこがれた犯人にとって、「野獣」というタイトルが付いたノベルが出るのはすごく嬉しいことなんじゃないだろうか。犯人、死んでいるけれど。