- 作者: 大沢在昌
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/10/22
- メディア: 新書
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
「小説宝石」連載、2006年9月に単行本として発表された作品を、2008年12月にノベルス化。
久しぶりの「新宿鮫」シリーズ。このシリーズのスタートがカッパノベルスだったので、どうしても他の版では読む気が失せる。結局ノベルス化されるまで待つことになるのだが、それでもあまり読みたいという気力は起きなかった。いってしまえば、鮫島に飽きたというか、この物語のパターンに飽きたというか。
本巻では、『炎蛹』『氷舞』『風化水脈』に登場したロベルト・村上が深見と名を変え、鮫島と全面対決する。また鮫島と同期であり、互いに相容れない存在であるエリート警官香田もとある理由から表立って鮫島と対立する。ただ、鮫島と正面切って戦うわりには思慮が足りないというか、不用意すぎるというか。一応背景を描いているとはいえ、感情の赴くままに動いているという印象しか浮かんでこない。またもう1人の主人公ともいえる明蘭の魅力というのが全然伝わってこなかったのもマイナス。いずれの登場人物についても、抱えているものを言葉だけ連ねればそれでオーケーみたいな安易さが見られる。昔の大沢みたいに、行間から滲み出てくる怨念とか感情の迸りが全く感じられないというのは、かつての新宿鮫ファンとしては残念であった。
鮫島の恋人・晶がほとんど物語に絡まなかったというのは構成ミスだろうか。晶が売れるに従って二人のつながりに綻びが生じつつあるのだが、ほのめかすだけほのめかしときながら後は全く触れずというのは、次作への引きとしてもせこいやり方じゃないだろうか。
話がでかくなりすぎて、結末の付けようが無くなったので無理矢理終わらせたみたいな最後は感心しない。登場人物の動き方が性急すぎるし、バタバタするだけで全く解決になっていない終わり方というのは、読者にとって大いに不満が残るところである。
今まで残していたツケを支払ったような作品だったが、逆に新しいツケが残るような終わり方だった。深見にしろ香田にしろ、抱えていたものの大きさを考えたら、すっきりと終わらせるには上下2巻ぐらいは必要だったのではないだろうか。
どうでもいいけれど、最後は殉職して終わるとか、最後に警察機構の全てをぶっ飛ばすような終わり方をしない限り、いつまで経ってもずるずる続くのかな、このシリーズは。さすがに賞味期限切れじゃないだろうか。