平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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笠井潔『探偵小説論I 氾濫の形式』(東京創元社)

第一次大戦という、人類史上初の大量殺戮戦争後、探偵小説は開花した―とする持論を克明に跡付け、正面から第一次大戦を通過しなかった日本においては、それが第二次大戦後にまで持ち越されたとし、『本陣殺人事件』に始まる探偵小説第二の波を体系立てる。横溝正史から大井広介、坂口安吾山田風太郎高木彬光鮎川哲也松本清張中井英夫に至る画期的な戦後探偵小説論。(帯より引用)

『創元推理』1992年秋号から1996年春号に連載された「戦後探偵小説論」に加筆訂正を加え、1988年12月に刊行。



はっきり言って、笠井潔の小説を読んで面白いと思ったことは一度もない。さらに言えば、笠井潔の評論を読んで、心から納得したことは一度もない。どちらも少ししか読んでいないけれど。そのせいで偏見の目を持っていることは事実だが、それほど間違っているとも思っていない。

いわゆる「大量死論」に沿い、笠井が名付けた「探偵小説第二の波」の作家たち、横溝正史から中井英夫に至るまでの作家論が本書である。所々はふーんと思うところもあるのだが、何でもかんでも大量死にこだわられてはたまらない。細かいところをどうのこうの言うほどの能力はないのだが、読んでいても全く納得できないのは、響くものが無いのだろう。いくつかの事実を都合よく捻じ曲げて結び合わせているとしか思えない。そもそも「大量死論」自体が全く納得できない。この評論が書かれてから15年以上経つが、「大量死論」は一派を除いてほとんど受け入れられていない。結局独りよがりだったんだなと思ってしまった。

まあ、中身について何も語っていないけれど、面倒なだけ。つまんない物を語るつもりはない。なら書くなって。