平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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横溝正史『完本 人形佐七捕物帳 六』(春陽堂書店)

 横溝正史が愛惜をもって描いた時代劇調ミステリシリーズ―江戸を舞台に、人形のような色男である佐七が繰り広げる推理劇。
 第六巻は昭和22~26年の様々な雑誌に掲載された作品を中心に計20本が収録されている。解説によると、横溝も参加した探偵作家クラブ、捕物作家クラブが発足し、ジャンルが盛り上がっていた時期の作品とのことである。しかし残念なことに、今一つという作品が多い。『蝶々殺人事件』『獄門島』などが書かれていた時期と重なっているせいか、多作の影響があったのかもしれない。ユーモア満載の「白羽の矢」、大量毒殺事件を扱った「石見銀山」、毒殺トリックと犯人探しと人情物をうまく絡めた「恋の通し矢」あたりぐらいがお薦めだろうか。まあ、佐七ものが好きだというのであれば、何を読んでも十分楽しいのも事実ではある。とくにお粂が行方不明となって佐七たちがあたふたする「女虚無僧」は、そういう見方をすれば面白い。