平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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横溝正史『横溝正史少年小説コレクション4 青髪鬼』(柏書房)

 横溝正史の少年探偵物語を全7冊で贈るシリーズ第4弾。
 秋の空よりも青い頭髪の怪人物による復讐劇『青髪鬼』、どくろ仮面の犯罪者との秘宝をめぐる争闘『真珠塔』、人体改造を受けた脱獄死刑囚を首領とする凶悪集団の暗躍『獣人魔島』――いずれ劣らぬ怪事件・怪人たちに敏腕記者・三津木俊助と探偵小僧・御子柴進が挑む! ほかに短篇5作と、初単行本化の未完成作品『皇帝の燭台』「黒衣の道化師」を収録。
 テキストはすべて、入手が困難な初出・初刊に準拠、横溝正史の真髄を伝えるとともに、資料的価値も十分満足させる、オリジナル決定版!(粗筋紹介より引用)
 2021年10月刊行。

 

 第4巻は新日報社の敏腕記者・三津木俊助と、探偵小僧・御子柴進のコンビが活躍する『青髪鬼』『真珠塔』『獣人魔島』の長編3作と、短編「ビーナスの星」「花びらの秘密」「『蛍の光』事件」「片耳の男」「謎のルビー」、中絶した「皇帝の燭台」「黒衣の道化師」が収録されている。短編は別人が探偵役を務めるが、似たような名前なのでここに収録したのだろう。
 ただ『青髪鬼』は『幽霊鉄仮面』などの作品を色々と流用し、つなぎ合わせたような展開。『真珠塔』は中編「深夜の魔術師」の改作。『獣人魔島』は『怪獣男爵』を短くしてアレンジしたような作品であり、新味はない。ただ、少年物なら三津木俊助と御子柴進のコンビが一番しっくりくる。金田一耕助や由利麟太郎に颯爽とした動きをされても、どうしてもピンと来ないのよね。少年誌で初めて読む分には、十分楽しめると思う。ただ、『真珠塔』で催眠術にかかった女優が罠にかかった自分の手首を切り落とすシーンは残っているのね……。これ、角川文庫版ではなかったような気がするんだけど、どうだっただろう。