平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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羽場博行『レプリカ―テーマパークの殺人』(角川書店)

レプリカ―テーマパークの殺人

レプリカ―テーマパークの殺人

神奈川県西部に世界史上繁栄を極めた三つの都市を再現した大型テーマパークが完成しつつあった。オープンを控えたある日、女性スタッフの惨殺死体が発見され、建設会社の社員、小田切は事件の背後を調べ始めるが……。巨大な事業の陰に渦巻く人間関係に鋭く迫る本格ミステリー。第12回横溝正史賞受賞作。(折り返しより引用)

1992年、第12回横溝正史賞受賞。同年5月、単行本刊行。



バビロニア古代ローマ、18紀ロンドンの町並みを再現した巨大テーマパークが舞台なのだが、あまりつながりが感じられない3つの町を再現したとしても人気が出るのだろうか、という疑問は湧くが小説とは関係ない。テーマパークという舞台設定は面白いし、フリー建築士ということもあって専門分野の説明は詳細。私は一応かじっていたのである程度はわかるのだが、建築関係の知識がないとかなりわかりづらいのではないだろうか。選評で指摘されて多分修正されているだろうから、応募時はもっとひどかったのだろう。

テーマパークを巡る会社内外の人間模様はありがちとはいえ面白く読めたのだが、通俗的といえば通俗的。また人物描写はちょっとわかりにくかった。それと小田切に対する警察の当たりは厳しすぎると思われる。そのくせ、警察は回り道ばかりしていて肝心の所を押さえてないため、かなり間抜けに見えてしまった。

トリックについてはもっと専門分野を生かすかと思ったが少々肩すかし。厳重なセキュリティーの中で殺人という題材はいいと思うので、もうちょっと驚くトリックを使ってほしかったと思うのは期待しすぎだろうか。

最後の犯人の逃走シーンこそ作者の書きたかったものの一つだったのではないか。もうちょっと伏線を張るなり、描写をわかりやすくしておくなどの配慮が必要だったと思える。

結論としては、題材に小説が負けている感じ。いっそのこと、エキセントリックな探偵を出したほうが面白かったんじゃないだろうか。