- 作者: 羽場博行
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1992/05
- メディア: 単行本
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1992年、第12回横溝正史賞受賞。同年5月、単行本刊行。
バビロニア、古代ローマ、18紀ロンドンの町並みを再現した巨大テーマパークが舞台なのだが、あまりつながりが感じられない3つの町を再現したとしても人気が出るのだろうか、という疑問は湧くが小説とは関係ない。テーマパークという舞台設定は面白いし、フリー建築士ということもあって専門分野の説明は詳細。私は一応かじっていたのである程度はわかるのだが、建築関係の知識がないとかなりわかりづらいのではないだろうか。選評で指摘されて多分修正されているだろうから、応募時はもっとひどかったのだろう。
テーマパークを巡る会社内外の人間模様はありがちとはいえ面白く読めたのだが、通俗的といえば通俗的。また人物描写はちょっとわかりにくかった。それと小田切に対する警察の当たりは厳しすぎると思われる。そのくせ、警察は回り道ばかりしていて肝心の所を押さえてないため、かなり間抜けに見えてしまった。
トリックについてはもっと専門分野を生かすかと思ったが少々肩すかし。厳重なセキュリティーの中で殺人という題材はいいと思うので、もうちょっと驚くトリックを使ってほしかったと思うのは期待しすぎだろうか。
最後の犯人の逃走シーンこそ作者の書きたかったものの一つだったのではないか。もうちょっと伏線を張るなり、描写をわかりやすくしておくなどの配慮が必要だったと思える。
結論としては、題材に小説が負けている感じ。いっそのこと、エキセントリックな探偵を出したほうが面白かったんじゃないだろうか。