平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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横溝正史『横溝正史少年小説コレクション5 白蝋仮面』(柏書房)

 横溝正史の少年探偵物語を全7冊で贈るシリーズ第5弾。
 その素顔は誰にもわからぬ変幻自在の怪盗『白蝋仮面』、人間を次々と蝋人形に仕立て上げる『蝋面博士』、空飛ぶ犯罪集団を率いる『風船魔人』、金ぴかの奇怪な姿で少女たちをつけ狙う『黄金魔人』――追いつ追われつ、騙し騙され、息つく間もなく繰り広げられる探偵劇! 少年探偵・御子柴進と敏腕記者・三津木俊助の戦いの行方や如何に? 横溝正史リバイバル時に金田一耕助ものに改変されていた『蝋面博士』は、実に50年ぶりの三津木俊助登場のオリジナルバージョンで復刊! 他に長篇とはまた一味違うひねりのきいた短篇5作も収録、充実のシリーズ第5弾。(粗筋紹介より引用)
 2021年10月、刊行。

 

 第5巻は新日報社の敏腕記者・三津木俊助と、探偵小僧・御子柴進のコンビが活躍する長編『白蝋仮面』『蝋面博士』『風船魔人』『黄金魔人』と、ノンシリーズの少女向け短編「動かぬ時計」「バラの呪い」「真夜中の口笛」「バラの怪盗」「廃屋の少女」を収録。
 『白蝋仮面』は絵物語『探偵小僧』(『横溝正史探偵小説選V』(論創社)収録)、『青髪鬼』(第4巻収録)に続いて白蝋仮面が登場。何らかのシリーズ化を目指していたのだと思われるが、本作が最後である。過去の作品のシーンをつぎはぎしたような作品。最後の宝石の隠し方には違和感ありまくり。『蝋面博士』は角川文庫での金田一耕助改変からオリジナルバージョンになって登場だが、はっきり言ってなぜこれを金田一作品に改変したのか聞きたい。本作品は特に三津木でなければいけなかった作品だろう。『風船魔人』は今までの作品とは異なるアイディアは面白いのだが、他の部分に力が入っていないのは残念。『黄金魔人』はいろは順に被害者を襲うという犯人に突っ込みを入れたいぐらい。短編は特に語るところはないが、「真夜中の口笛」の凶器トリックはドイル短編を真似たもので、実現不可能だろうがちょっと面白い。
 作品のマンネリ化は否めないが、昭和30年代まで色々な雑誌で探偵小説を書き続け、少年に探偵小説の面白さを伝え続けたのはすごいと思う。