横溝正史が愛惜をもって描いた時代劇調ミステリシリーズ―江戸を舞台に、人形のような色男である佐七が繰り広げる推理劇。
第八巻は昭和27~29年に各誌に掲載された作品を中心に、計16本を収録。この頃になると一編あたりのページ数もそれなりにあり、読み応えのある作品も多い。
「くらげ大尽」は題材的に現代では通用しないものの、被害者側のトリックという意味では怪作。「うかれ坊主」はそのキャラクターも含め楽しめる人情噺。「くらやみ婿」は佐七作品にいくつかある契った相手は誰だパターンの決定版で、お粂も活躍する人情噺の傑作。「神隠しにあった女」は読者サービスもうまく交えた人情噺の傑作で、作者が自選集のタイトルにも選んだ作品。個人的には佐七の人情噺で一番好き。「当り矢」は佐七作品では珍しいぐらい、ストレートな謎解き作品である。
後に金田一作品で使われているプロット、トリックもあるので、比べてみるのも一興である。