- 作者: ヘレンマクロイ,Helen McCloy,好野理恵
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2002/11/01
- メディア: 単行本
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1968年発表。マクロイの20作目の長編小説。2002年11月、翻訳。
雪に閉ざされた山荘で、しかも呪いが起きるという開かずの部屋での不可能殺人事件。うーん、マクロイって本格ミステリの味を持ちつつもやっぱりサスペンスの作家と勝手に認識していたため、ここまでカチッとした本格ミステリを書いているとは思わなかった。しかも精神分析学者ベイジル・ウィリングって、シリーズ探偵だったんだ……。
1968年という書かれた時代を考えても、かなり古典的な作りの本格ミステリ。心理学的分析があるのはマクロイらしいが、本格ミステリとしては今一つ。警察が来ているのなら、死因を調べれば誰が犯人かなんて一発でわかると思うのだが。だいたい、最初に調べるでしょう。その時点でダメだなあ、これは、キーティングもどこが良くて名作100選に選んだのだろう。
登場人物としては、館の借主である小説家の娘・ルシンダと隣に住む少年・アイヴァンがちょっと面白かったのだが、半分近くもこの2人のやり取りにページを費やされるのは興醒め。大人の視点だけにしておけば、あっという間に終わる事件だから、仕方のないことかも。
原題は"Mr.Splitfoot"であり、ルシンダが叫ぶ「割れ足さん」である。この小説に出て来るだけの言葉かと思ったら他にもあったので、割と有名な幽霊なんだろうか。英語が読めないので、その辺はよくわからない。それにしても、これに「割れたひづめ」というタイトルを付けるのはどうかと思う。
巻末にある加瀬義雄の「ヘレン・マクロイ――作家と作品」は良かった。作者の経歴と全作品解説が付けられており、これを読めばマクロイがどんな作家かわかるようになっている。本書でよかったと言えるのは、むしろこちらだったりする。