平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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川澄浩平『探偵は教室にいない』(東京創元社)

探偵は教室にいない

探偵は教室にいない

わたし、海砂(うみすな)真史(まふみ)には、ちょっと変わった幼馴染みがいる。幼稚園の頃から妙に大人びていて頭の切れる子供だった彼とは、別々の小学校にはいって以来、長いこと会っていなかった。変わった子だと思っていたけど、中学生になってからは、どういう理由からか学校にもあまり行っていないらしい。しかし、ある日わたしの許に届いた差出人不明のラブレターをめぐって、わたしと彼――鳥飼(とりかい)(あゆむ)は、九年ぶりに再会を果たす。
日々のなかで出会うささやかな謎を通して、少年少女が新たな扉を開く瞬間を切り取った四つの物語。

青春ミステリの新たな書き手の登場に、選考委員が満場一致で推した第28回鮎川哲也賞受賞作。

2018年、第28回鮎川哲也賞受賞。応募時タイトル「学校に行かない探偵」。改題のうえ、2018年10月、単行本刊行。



差出人不明のラブレターの謎を解く「第一話 Love letter from……」。クラス合唱の伴奏を演奏しない友人の謎を解く「第二話 ピアニストは蚊帳の外」。友人が彼女と会わない理由の謎を解く「第三話 バースデイ」。家出した真史を追いかける歩「第四話 家出少女」。

主人公も謎解き役も14歳。日常の些細な謎が描かれた連作短編集。正直言って、いまさら何を、と言ってしまいたくなるくらい、古臭い設定になってしまった気がする。よりによって公募新人賞にこんな手あかの付いた設定の作品を送らなくても思いながら読んでいたが、読み終わってみるとそれほど悪くはなかった。良くも悪くも14歳の青春ミステリ、というか。

舞台も登場人物も丁寧に描かれている。ちょっと大人びたところはあるものの、14歳らしさもよく描けている。謎はあまりにも小粒だが、推理の組み立て方は悪くない。鳥飼歩がなぜ中学校に通わないのかというところをもう少し書いてほしかった気もするけれど、それらは次作のお楽しみなのかな。ちょっと嫌らしい書き方のような気もした。読者側が悪くとっているだけどかもしれない。

ただ、設定が古臭いという印象は変わらなかった。少なくとも、公募新人賞には不向きな作品。新味がまったくない。偶に読む分にはいいかもしれないけれど、これを鮎川賞と言われるとちょっと違うな、と思う。一つぐらい強烈な謎と推理があれば、もう少し評価が変わっただろう。