平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ボアロー、ナルスジャック『悪魔のような女』(ハヤカワ・ミステリ文庫)

悪魔のような女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

悪魔のような女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

自殺と見せかけて妻を殺し、莫大な保険金を欺し取る――その戦慄の計画を考えついたのは、ラヴィネルの愛人の医師リュシエーヌだった。しがないセールスマンのラヴィネルにとって、彼女と暮らすためには他に方法はない。完璧に練り上げた計画は成功した。しかし、その直後、想像もできない恐ろしい事件が…予測不可能なストーリー展開、あまりに衝撃的な結末。あらゆる恐怖の原点となった、サスペンス小説の不朽の名作。(粗筋紹介より引用)

1952年、フランスで刊行。1955年、早川書房で邦訳化。1996年7月、文庫化。



フランス・ミステリ界の大御所であったボアローナルスジャックの第1作。既にミステリを書いていたピエール・ボワローとトーマ・ナルスジャックの共同執筆ネームであり、「処女作」という書き方は当てはまらない。1955年にはアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督によって映画化されて世界的に知られている。映画がシャロン・ストーン主演で1996年にリメイクされたことから、40年以上たって文庫化されて簡単に読むことができるようになった。逆に言うと、これだけの古典を簡単に読むことができなかったというのは、非常に残念な話でもある。ということで文庫本が出てすぐに買ったんだけど、結局読むのは今頃だったりする。

「サスペンス小説不朽の名作」と書かれているぐらい歴史的な作品であるが、今読むと古臭いイメージがあることは否めない。登場人物は5人だけで、主要人物は夫と妻と愛人しかいない。今の作品から見るとシンプルすぎるくらいシンプルだし、ひねりがあるわけでもないからオチも見えやすい。それでも読み進めてしまうのは、フランスミステリの甘い香りが流れているからだろうか。

今更という人がいるかもしれないが、ミステリという文学の流れを知りたい人には一度は手に取ってほしい作品。シンプルだからこそ、見えるものがここにある。