平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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加藤元浩『Q.E.D.―証明終了―』第47巻(講談社 マガジンコミックス)

バリ島でNSAが管轄する研究施設から記録ファイルが盗まれた。犯人は逃走中に交通事故を起こし、ファイルは消失した。しかし厳重な警備がされている施設から、誰がどうやってファイルを外へ持ち出したかがわからない。「陽はまだ高い」。
モデルの亜希は、海外進出の誘いを受けた。しかし彼女は、背が高くて虐められていた中学時代、ゲーム機が盗まれて彼女の机から見つかった際、友人の可奈が無実を主張してくれた理由がわからないことが心に残っており、踏ん切りがつかないままだった。可奈が友人2人と亜希の実家へ遊びに行った時、生活費が紛失する騒動が起きる。「坂道」。
「陽はまだ高い」は、これでもかとばかりに監視されている施設からいかにしてファイルを盗み出すことができたか、という謎が出されているが、むしろ犯人を知っていると思われる教授がなぜ告発しないのかという謎のほうが興味深い。人間心理の謎は、計り知れないところがある。
「坂道」は、生活費紛失騒動自体は難しくないものの、なぜそのような騒動を起こしたかという謎のほうが興味深い。タイトルの「坂道」が、トリックに使われているだけではなく、人生そのものを暗示しているところが非常に上手い。
今回の2編は、いずれも事件の謎そのものを解き明かすだけでなく、そこに秘められた人の心にまでスポットが当てられている。そこには、燈馬の内面の成長が関係しているように思えるのは、私だけだろうか。