聖者ニューヨークに現わる (1957年) (世界探偵小説全集)
- 作者: レスリィ・チャータリス,中桐雅夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1957
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (2件) を見る
セイントことサイモン・テンプラーが二ューヨークへやってきたのは、直接には富豪ヴァルクロスの頼みからだった。三年前、息子のビリーを誘拐して殺し、証拠不十分で釈放された五人のギャングを始末してくれたら百万ドルの報酬を支払うというのである。悪漢相手の仕事なら、セイントにとっても異存はなかった。
だが、セイントの前に立ちふさがる悪党たちはなまやさしいものではなかった。判事や警察内部の人間も配下に置く巨大な組織がニューヨークの暗黒街を支配しているのだ。だが、セイントはひるまなかった。悪の組織に敢然と挑戦状を叩きつけ、さっそく行動を開始した!
世紀の義賊セイントの手に汗握る大活躍! ルパンと並び、世界中に愛読者を持つ人気シリーズの最高作。(粗筋紹介より引用)
1935年作品。1957年1月、翻訳。
作者は自称殷の皇帝の正当な末裔。シナ人の医師が父、イギリス人が母。どうせほらを吹くのなら、これぐらい大きい方が面白い。
いわゆる義賊・怪盗ものをセレクトする時、かならず挙がってくる名前の一人が聖者ことサイモン・テンプラー。名前は結構有名だと思うのだが、邦訳作品はほとんど無いというのが現状。ジュヴナイルの方が入手しやすいんじゃないだろうか。ちなみに自分も、そちらしか読んだことがない。ということで、今年最初の本はとりあえず薄いもので読み残しの一冊から手に取ってみた。
義賊とあるが、ルパンみたいな怪盗ものは期待できない。法で罰せられない者と法の裏側で戦う話なので、現実の無力感とラップすることができないと、共感するのは難しいかもしれない。大人が夢想するような執筆当時のおとぎ話。法律体系が異なるから、日本ではあまり受けなかったんじゃないかと思う。
知恵よりも勇気で苦境を乗り越えていくタイプの主人公。読んでいても偶然や都合よい展開が所々で出てくるのには少しがっくりするし、途中で敵方の女が助けてくれるシーンなどは目を覆いたくなった。“大将”が誰か、というところぐらいかな、見どころは。
テンポ自体はとても良いし、ストーリーもスリルのある展開が続くので、主人公さえ気に入ることができれば面白く読めるかもしれない。