平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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藤子・F・不二雄『チンタラ神ちゃん』(小学館 藤子・F・不二雄大全集)

藤子・F・不二雄大全集 チンタラ神ちゃん

藤子・F・不二雄大全集 チンタラ神ちゃん

藤子・F・不二雄大全集第3期第10回配本の一冊。ジローの秘密基地であるほら穴にやってきたのは、チンタラ教の神様、チンタラ神ちゃん。神ちゃんはチンタラ教を広めようと、友人の福の神、ビンボー神と一緒に布教を進めるが、失敗ばかりの毎日。『少年ブック』1967年1月号〜12月号連載。藤子Fと藤子Aの合作。
 1976年にパワァコミックス(双葉社)で1冊にまとめられて以来の単行本化。パワァコミックス版は収録順がバラバラで、しかも1話未収録という状況だったので、全話収録は初めて。
 内容は、チンタラ神ちゃん、福の神、ビンボー神という3神がドタバタを繰り広げる、ナンセンスギャグ作品。合作とのことだが、神ちゃんやビンボー神、ママなどがFキャラ、福の神、ジロー、パパ、番長などがAキャラとのこと。ストーリーも分担しているようで、『Neo Utopia』32号の分析によると、「クルパー教」(よく改題されなかったものだ)では雷に打たれて神ちゃんが狂うまではF、狂ってからはAが担当しているとのことだ。最終和の最終回らしくない終わり方は、週刊誌全盛時代に売り上げが今一つだった月刊誌に連載されたため、唐突に終わったものなのだろうか。解説で当時の編集者である安藤金次郎氏は、「ギャグ漫画の中で一番人気があった」と書いているのだが、実際のところはどうだったのだろう。人気が今一つで、打ち切られた感もあるのだが。
 感想としては、微妙としか言いようがない。面白いエピソードもあるのだが、FとAのギャグに対する個性がぶつかり合い、変な化学反応を起こしているような感じなのだ。絶対面白い、と言うことはできないが、さりとてつまらないというわけでもない。感想が難しい作品でもある。ただし、作者自身は色々なことを試しつつ、楽しんで描いていたのではないだろうか。
 パワァコミックス版は、古書価がかなり高騰していたと聞く。二人の合作という珍しい作品が、こうして安価(1500円はちと高いか)で手軽に読むことができるようになったのは、とても嬉しい。