平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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藤子・F・不二雄『大長編ドラえもん』第6巻(小学館 藤子・F・不二雄大全集)

藤子・F・不二雄大全集 大長編ドラえもん (6)

藤子・F・不二雄大全集 大長編ドラえもん (6)

藤子・F・不二雄大全集第3期第9回配本の一冊。大長編ドラえもんのうち「のび太の創生日記」「のび太と銀河超特急」、そして絶筆となった「のび太のねじ巻き都市冒険記」を収録。
のび太の創生日記』は、藤子Fが好きな題材と思われる地球創世を取り扱ったもの。のび太たちとジャイアンスネ夫がバラバラに行動するなど一体感に欠けており、様々な時代のエピソードをつまみ食いして並べる展開となって、作者が書いているように、構想だけがどんどんふくらんで収拾がつかなくなっている。とはいえ、これをだらだら書き続けても、面白いものには仕上がらなかっただろう。はっきり言えば失敗作なんだろうが、最後にのび太のそっくりさんが大人になった野美のび秀が、秘書である源しず代にプロポーズするところは、のび太としずかの未来を暗示しているようにもみえる。ここだけは嬉しかった。
のび太と銀河超特急』は、『銀河鉄道999』を藤子F流にアレンジしてみたというところか。ミステリー列車、遊園地ドリーマーズランドでの様々なアトラクション、道の敵との遭遇、最後はのび太が活躍など、娯楽に徹した仕上がり。一本芯が通ったストーリーの中に、短編要素を含んだ細かいエピソードを連ねる形になっており、読んでいても飽きが来ない展開。晩年の大長編では面白い作品の方ではあるが、逆にこれといったテーマがなかった分の物足りなさはあるかもしれない。
のび太のねじ巻き都市冒険記』は絶筆作品。連載2回目までが藤子Fのもので、3回目〜6回目はアイディアノートを基にスタッフが描いたもの。読んでいて物足りなさと淋しさがあるのは仕方がないが、もうちょっと違う展開があったんじゃないかとも思ってしまう。ねじ巻きの部分をもう少し活かすことはできなかったのだろうか。
この巻で完結。最後は藤子Fのライフワークともなってしまった大長編だが、後半になるにつれ、出来不出来の差が激しくなっていったのは残念。それでも、最後まで『ドラえもん』の世界を描きつくそうとしたその姿勢には脱帽する。