- 作者: 垣根涼介
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/06/01
- メディア: 文庫
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2000年、第17回サントリーミステリー大賞と読者賞のW受賞作品。2000年4月、文藝春秋より刊行。2003年、文庫化。
いわば自分探しの冒険小説であり、少年の成長物語。ベトナム行きまでの、長瀬と慎一郎、それに友人である源内との絆結び。ベトナムにおけるメイやビエンとの新たな出会いに友情、そして妨害に立ち向かうサスペンス。流れるようなストーリー展開と、主人公や重要登場人物のキャラクター造形、ベトナムの描写は見事。この文章が新人の手によるものとはとても思えないぐらいに達者であるし、面白い。逆に敵側の登場人物や妨害の動機などについてはやや弱い。これは枚数制限によって省略せざるを得なかった部分だろう。この枚数で、登場人物を配置し、ベトナムを舞台とするとなると、この程度の規模の事件で収めるしかなかったと思われる。特に、曰くありげな主人公である長瀬の、過去についての描写がほとんど無かったことは残念であった。
とはいえ、読んでいる途中ではそんな不満は起こらないだろう。少なくとも慎一郎が成長する姿には清々しさが感じられるし、メイやビエンたちと友情を育むその過程は充分に感動できるものである。これはW受賞も納得の作品である。