平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ジョン・グリシャム『評決のとき』上下(新潮文庫)

評決のとき〈上〉 (新潮文庫)

評決のとき〈上〉 (新潮文庫)

評決のとき〈下〉 (新潮文庫)

評決のとき〈下〉 (新潮文庫)

いまなお人種差別の色濃く残るアメリカ南部の街クラントン。ある日この街で、二人の白人青年が十歳の黒人少女を強姦するという事件が起きた。少女は一命をとりとめ、犯人の二人もすぐに逮補されたが、強いショックを受けた少女の父親カール・リーは、裁判所で犯人たちを射殺してしまう。若いけれど凄腕のジェイクが彼の弁護を引受けたのだが……。全米ベストセラー作家の処女長編。(上巻粗筋紹介より引用)

カール・リーの弁護を務めるジェイクの周辺では、庭先に燃える十字架を立てられるなどのいやがらせや脅迫が相次ぐ。才気煥発な女子学生エレンと共に準備を進めるが、確信犯ともいえる犯罪で無罪を勝ち取るのは不可能に近い。公判が始まり、黒人と白人の対立が頂点に達するなか、ついに評決のときを迎えたが――。アメリカの裁判の雰囲気をリアルに伝える、第一級の法廷サスペンス。(下巻粗筋紹介より引用)

ベストセラー作家、グリシャムの処女長編。



そういえば昔流行ったよなあ、などと思い出しながら読んでみた作品。黒人と白人の対立や人種差別というのは、オバマが大統領になった今でも、根っこのところでは変わらないのだろうなあと思いつつ、陪審員制度ならではの評決まで何とか読み終えた。実際の裁判が始まるのは下巻途中という展開が、読んでいてどうも腹立たしい。特に検事と弁護士の思惑が入り乱れるところなど、わかっていながらも馬鹿馬鹿しさしか感じなかった。これがアメリカの法廷サスペンスなんだ、と言われてしまえばそれまでなんだけど、せめてもう少しスピーディーな展開にしてほしかった。テーマの重さはわかるけれど、社会が抱える問題点をこれとばかりに突きつけられても、娯楽作品として読んで何も疑わず終わっているのかと思うと、アメリカ社会って何なのだろうと思ってしまう(まあ、日本も同じケースがあるのだろうが、きっと)。

もう長いし、腹立つし、という感じでようやく読み終わった。H・デンカー『復讐法廷』なんかは感動しながら読むことができたのに、この違いはいったい何なのか。自分の感性が変わったのかな……。