平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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高村薫『黄金を抱いて翔べ』(新潮社)

黄金を抱いて翔べ

黄金を抱いて翔べ

コンピュータで制御された鉄壁の防護システムの向う側に眠る六トンの金塊、しめて百億円――

地下ケーブルが、変電所が黒煙をあげ、エレベータは金庫めざして急降下。練りに練った奪取作戦の幕が、いよいよ切って落とされた。

メカ、電気系統、爆薬等、確乎たるディテールで描く、破天荒無比なサスペンス大作。(帯より引用)

1990年、第3回日本推理サスペンス大賞受賞作。



今じゃ新聞で世の中にケチを付けているだけの作家と化しつつある(はい、偏見です)高村薫のデビュー作。何作か読んだけれど、生理的に受け付けない作風なので、この本は未読のままだった。まあ佐野洋の選評までいくと単なるイチャモンでしかないが、暗い銀行強盗の話なんて好き好んで読みたいとは思わなかったのも事実。それでもせっかく手元にあるので、と思って読んでみることにした。結論。読まなきゃよかった(苦笑)。

確かに銀行襲撃の手段はきめ細やかに描かれているし、舞台となった大阪についてもよく描かれていると思う。人物描写だってキッチリとしている。ハッキリ言って暗い人の集まりばかりで好きになれないが。これが新人の筆によるものだったというのだから、並外れた実力の持ち主だということはわかる。受賞して当然と言えるかもしれない。ただなあ……描き方から作者の底意地の悪さというか、視線の冷たさが滲み出ているように感じるのは気のせいだろうか。どこがどうとは言えないのだが、作品にも登場人物にも愛情が感じられないのだ。偏見かなあ、これって。

とりあえず読んでみたってだけかな。他にも読んでいない作品があるけれど、どうしようかな。