平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

マーガレット・ミラー『心憑かれて』(創元推理文庫)

心憑かれて (創元推理文庫)

心憑かれて (創元推理文庫)

八月も終わりに近づくと、夏の自由に飽いた子どもたちが、また小学校の運動場に戻ってくる。すり傷だらけの手足をかかえ、汗を飛ばして逝く夏を謳歌する彼らの姿を、三十二歳のチャーリーは密かに見守りつづけた。こんなところにいてはいけない。それはわかっていた。精神科医の、そしてあの保護監察官の言葉が脳裏をよぎる。だが、もうしたがうことはできない。ひとりの少女に、どうしようもなく心とらわれていたからだ……! 夏のカリフォルニアを舞台に、精神異常の烙印を押された男が巻き起こす緊迫の心理ドラマ。名手がその力量を存分に発揮した傑作サスペンス。(粗筋紹介より引用)

1964年、発表。1990年9月、邦訳刊行。



1960年代なら、まだロリコン、ストーカーがそれほど問題になっていなかった頃かと思うのだが、今読んでも十分通じる内容になっているのはさすがとしか言いようがない。先見の明があるというべきか。もちろん、今ほど克明な描写は無いのだが、逆にその分読みやすい、読んでいて不快になる部分が少ないのは確か。

しかし壊れているのは主人公だけかと思ったら、実際のところみんな壊れているじゃないか。アメリカってこんな人物ばっかりなのか(偏見です)。

英語タイトルは"THE FIEND"。全然気にしてなかったけれど、これもちゃんと意味があるところは巧い。

怖いというわけではないのだが、背中がむずがゆくなってくるようなサスペンスはさすが。結末も含めて、本当に巧い作家だと思う。