命の灯を消さないで―死刑囚からあなたへ 105人の死刑確定者へのアンケートに応えた魂の叫び
- 作者: 死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90
- 出版社/メーカー: インパクト出版会
- 発売日: 2009/04
- メディア: 単行本
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アンケートからは死刑囚が抱えている様々な思い、叫びが見えてきて、非常に興味深い。罪を悔いるもの、冤罪を叫ぶもの、拘置所における処遇の不満を訴えるもの、淡々とした現状報告、死刑制度への怒り、死刑廃止の願い等々。そこにあるのは、滅多に聞くことのできない、死刑囚の生の声である。その声を聞いてどう思うかは読者の判断である。無罪主張を訴える人たちに嫌悪感を抱く人がいるかもしれないし、処遇の悪さを訴える声について図々しいと思う人がいるかもしれない。死刑廃止を叫ぶ人に、自分のやったことを省みずに何を言っているのかと怒る人もいるだろう。生きて償いたいという声に、何を償うんだと嘲笑する人がいるかもしれない。逆に死刑囚のそんな声に同情する人もいるだろう。罪を悔いる姿に感銘を受ける人がいるかもしれない。
ただ、実際に起こした事件を隠す(表に出さない)やり方は、少々問題ではないだろうか。死刑囚を知るのであれば、やはり死刑判決を受けた事件そのものについても触れるべきであろう。都合の悪いところを隠して、死刑反対を訴えるのはフェアではない。
また、「激増する死刑執行について」については、この本の性格からするとここに載せるべきではなかったと思われる。この本はあくまで死刑囚という存在を確認するための本であり、死刑執行の現状を訴える性質の本ではないからだ。
死刑囚の生の声を伝えるというのは、確かによい企画だと思う。だが匿名男性Aが「以前の弁護士会の調査同様、形式だけで終えられてしまうと、その後の揺り戻しと反動から覚える失望も相当なものになるので、できるなら本腰を入れて、本気で乗り込んでくるぐらいの気概でやってもらえると助かります」と書いているように、本腰を入れて死刑反対を訴えてほしいものだ。また松本昭弘死刑囚が書いているように、日本弁護士協会は死刑反対を訴えるのなら新しい確定囚にも手弁当で就くようにしてほしいものだ。それとどうせなら、被害者側にも弁護士を派遣し、マスコミなどのいわれのない中傷や取材攻勢に対する防御も行ってくれ。