- 作者: 結城昌治
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/10/09
- メディア: 文庫
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「週刊文春」1971年9月6日号〜1972年5月22日号掲載。1972年7月に文藝春秋より刊行。1976年にロマンブックス(講談社)、1977年に角川文庫より刊行。1981年、東京文藝社「結城昌治推理小説選集」第7巻として刊行された。
豪華客船に乗った100名の女性とともの洋上旅行。これだけ聞くと設定はよいのだが、船室は質素、予算はぎりぎりというところは「豪華客船」「洋上大学」という言葉とは裏腹にある見たくない現実。しかも大学の講師がまた生臭さそうな人たちばかり。事件の語り手も週刊誌の若手編集員だが魅力に欠けるあたりの妙なリアリティも、執筆当時の需要なのだろうか。豪華客船での女子生徒行方不明、さらに女性講師の密室殺人という表面だけみれば本格ミステリファンの購買意欲をそそられる設定なのだが、読み始めると裏切られることは間違いない。
事件そのものよりも、事件によって自らに降りかかる災難の方にあたふたする登場人物たちと、記者とは思えないぐらいぐずぐずな語り手にいらいらし、手がかりらしい手がかりが得られないまま、結末であっさりと解決される展開にも唖然。動機に愕然。ここまでバランスの崩れた本格ミステリも珍しい。これがあの『ひげのある男たち』などのすばらしいユーモアミステリを書いた結城昌治の作品なのか、と落ち込んでしまう一冊。