平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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フェイ・ケラーマン『水の戒律』(創元推理文庫)

水の戒律 (創元推理文庫)

水の戒律 (創元推理文庫)

夏の闇をついて一件のレイプ事件が発生した。現場は、地元民がほとんど足を踏みいれることのないユダヤ人コミュニティ。厳格な戒律に従って敬虔な毎日を送っていたはずの彼らが、なぜこのような事件を引き起こしたのか? 立ちはだかる宗教の壁を前に、未成年犯罪担当のデッカーは困難な捜査を強いられるが……。マカヴィティ賞最優秀処女長編賞に輝く、スリリングなデビュー作。(粗筋紹介より引用)

1986年の作品。1993年に翻訳。ピーター・デッカー刑事&リナ・ラザラスシリーズ第1作。



アメリカにおけるユダヤ人コミュニティを舞台にしたデッカー&リナシリーズの第1作。作者がベストセラー作家ジョナサン・ケラーマンの妻であったことや、舞台が珍しいことから、当時は結構話題になっていた。だから自分も買っていたんだろう。いつもだったらあまり手が伸びないような作品である。

レイプ事件から続く殺人事件を捜査する刑事小説だが、事件そのものはサスペンスとしての味付け程度であり、二人の主人公が出会うためのきっかけでしかない。中心となるのは、デッカーとリナの恋愛模様である。捜査中の刑事と事件関係者が恋に落ちるという程度では、別に面白くも何ともないが、舞台にユダヤ人コミュニティを選んだところがシリーズの成功といえるところか。ユダヤ社会や宗教を背景としているために、大人の男と女がプラトニックな恋愛で留まってしまうもどかしさが、このシリーズの売りだろう。というか、それ以外にこの作品について語るところはあるのか?

シリーズものだけど、大人の恋愛小説にはあまり興味がないので、続きを読むことはないでしょう、多分。