平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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輪渡颯介『掘割で笑う女 浪人左門あやかし指南』(講談社ノベルス)

掘割で笑う女 浪人左門あやかし指南 (講談社ノベルス)

掘割で笑う女 浪人左門あやかし指南 (講談社ノベルス)

城下の堀割で若い女の幽霊を見たという普請方の男が、まもなく病で死んだ。女の姿を見たものは必ず死ぬという噂が囁かれる折、お家騒動が持ち上がり家老が闇討ちされた。怖がりで純情な甚十郎と酒と怪談を愛する浪人・平松左門が、闇に溶け込んだ真実を暴く痛快時代活劇!(粗筋紹介より引用)

2008年、第38回メフィスト賞受賞作。



メフィスト賞で時代物は初めて? 珍しかったから、何となく買ってみた。

10年前に家老を闇討ちした仲間たちが、今度はその闇討ちを依頼した現家老を闇討ちに。ところが、その仲間たちがひとりずつ斬られていく。死者に殺されたという言葉は真実か?

最初のうちは話があちらこちらに飛ぶため、物語の焦点がどことなくぼけてしまい、作者が何を言いたいのかさっぱりわからなかったが、中盤からは次々に斬られる闇討ちの仲間たちの謎を追う展開になって、ようやく面白さを感じた。帯には「本格時代小説と怪談ミステリの美しき融合!」と書かれてあったが、時代物という点も含め、いずれの要素も中途半端なままで終わった気がする。最初や途中で語られる小怪など、独立した章で語るのではなく、もっとうまく物語に溶け込ませることができたら、それなりのものになったと思うのだが。

事件の謎は、大したことがなかった。もっと怪談部分に特化すべきではなかっただろうか。自分としては、事件そのものよりも、左門が語る事件とは関係ない怪談話の方が面白かった。

タイトルから考えると、多分続編も考えているのだろうな。下手に本格ミステリは考えない方がいいと思う。とはいえ、時代物の良さを引きだすほどの描写力や筆力があるともいえないのだが。