- 作者: 飯田譲治
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/04/20
- メディア: 単行本
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人間の持つ不思議な力は、この部分に秘められていると考えられている。
その使用されていない脳の七〇パーセントは、こう呼ばれることがある―――『NIGHT HEAD』
(本文より引用)
ロシアの超心理学センターにいた御厨恭二朗になついているナジ・ジュマリは紛争によるアフガニスタンの戦災孤児である。念写の能力を持つナジが深い瞑想状態の中で写し出した一枚の写真。そこにいたのは、霧原直人、直也の兄弟だった。
直人と直也はロシアで御厨と再会する。二人と会ったナジが新たに念写した一枚の写真。そこには不思議な形の石像が写っていた。そして直也は脳のスクリーンにあるイメージをキャッチする。それは日本のある地方都市を中心として起きる大地震のイメージだった。直人と直也は日本を襲う大地震を阻止することができるのか。
『NIGHT HEAD』シリーズ最新作。前作のラストから4年が経過した話となっている。
10年ぐらい前にも書いたが、私は「NIGHT HEAD」のファンだった。テレビ版も映画版もビデオを買ったし、小説やマンガ、シナリオ、サントラに写真集まで購入。ついでに『東京BABYLON1999』もビデオ、CDを購入した。さすがに数年経って熱が冷めたが。しかし、直人と直也の新しい物語が出たとあっては、買わないわけにはいかない。
直人・直也の超能力を持つという故の葛藤はかなり影を潜めているが、異端の能力を持つものの苦悩を描くというスタンスは変わっていない。そんなところが、とても嬉しい。
今回は、地震予知を研究する民間科学者が登場する。大地震を予知しながらも、以前の予知失敗により誰にも相手にされないばかりか、妻も含め大勢の人々から嘲笑と憎悪の対象になってしまう。超能力とはやや違うが、己のことを誰にも理解されないという苦悩は、超能力者と変わらない。人は日常と違う力・現象・行動を嫌う。自分が存在する世界からはみ出すことを、自分自身が認めない。そんなジレンマを描かせると本当にうまいと思う。
今回の物語では、世界を変える変革の姿が前作と比べてはっきりと描かれている。「変革」というキーワードは残念ながら出てこないが。ミサキにいた者たちは、これからどうなるのか。
全ては次の直人と直也の行く先が知っている。
どうでもいいが、最初見たときは折原一の新作かと思いましたよ。