- 作者: 折原一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/08
- メディア: 単行本
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一方、戸田市内では謎の連続通り魔事件が発生していた。たまたま事件に遭遇した売れない推理作家の「僕」は、自作のモデルにするため容疑者の尾行を開始するのだが――。(帯より引用)
『沈黙者』以来5年ぶりになる「〜者」シリーズ、書き下ろし作品。
実話をネタに叙述トリックを駆使して繰り広げられる「〜者」シリーズ、久々の最新刊。片方の物語の進行役は、『冤罪者』『失踪者』などに出てくるノンフィクション作家五十嵐友也の妻であるみどり。もう片方は、書き下ろし長編を頼まれた売れない作家の「僕」。二つの物語が交互に並べられている時点で、あとはどのようにして二つの物語が重なるかを読者は楽しめばよい。
ただ、折原一の作風をちょっとでも知っている人からしたら、作者が今までどういう風に仕掛けたかを知っているわけである。結局そういう眼で読んでしまうわけだから、物語そのものの面白さを素直に感じることができなくなってしまう。結局、どこに仕掛けがあるか、そんな眼で読んでしまうわけだ。事件の謎そのものに、仕掛け以上の面白さがあればよいのだが、残念ながら本作はそこまでいかない。得体の知れない男がサスペンスに巻き込まれる程度では、読者はもう驚かなくなっている。作者は色々と苦労しているだろうが、自らの作風に縛られている感があるのは残念だ。
どこまで固執するのかわからないが、いいかげんこのスタイルは休止した方がいいと思う。このままでは、作品のマンネリ化は避けられない。