平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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柴田よしき『RIKO―女神の永遠』(角川文庫)

RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠 (角川文庫)

RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠 (角川文庫)



男性優位主義の色濃く残る巨大な警察組織。その中で、女であることを主張し放埒に生きる女性刑事・村上緑子。

彼女のチームは新宿のビデオ店から一本の裏ビデオを押収した。そこに映されていたのは残虐な輪姦シーン。それも、男が男の肉体をむさぼり、犯す。あがて、殺されていくビデオの被害者たち。緑子は事件を追い、戦いつづける、たった一つの真実、女の永遠を求めて――。

性愛小説や恋愛小説としても絶賛を浴びた衝撃の新警察小説。第15回横溝正史賞受賞作。(粗筋紹介より引用)



読む前から苦手なタイプのミステリだと思ってずっと手を着けていなかったが、ある理由により読んでみることにした。やっぱり予想通りだったな、と思うだけ。どうもこういう女性主人公が好きになれない。女性でも普通に人間として生きていけばいいだろうに、むやみに女性を振り回し、女性であることをことさらに強調するくせに、女性扱いされたら怒るタイプの女性だね、この主人公は。まあ、男性優位社会のこの世の中、とくにその傾向が強い警察という巨大組織の中では、そこまで尖るしかないのだろうけれど。ただ、複数の男と付き合うのはどうでもいいけれど、存在そのものが気に入らない。「書きようによっては、読者の顰蹙を招きかねない女性」と佐野洋が評しているようだが、私はダメです。

ミステリとしての作りは、通俗的だがしっかりしている。処女作とは思えない出来だ。ただ、それだけ。受賞するのは納得できるけれど、それ以上感心するところはないね。お見事と拍手するだけ。主人公の存在だけが突出し、他には何も残らない作品である。