- 作者: 有栖川有栖
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/03/08
- メディア: 新書
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安遠町で浅倉、別院町で番藤が射殺され、奇怪な手紙が届けられた。犯人は本当にA〜Zまでの殺人を行うのか。「ABCキラー」。
人気占い師のインタビュー後、ホームパーティーに誘われた有栖川は、目の前で毒殺事件と遭遇する。しかし、被害者が手に取ったジュースには、誰も毒を入れるチャンスがなかった。「モロッコ水晶の謎」。
中編三編に、掌編「推理合戦」を収録した国名シリーズ第八弾。
有栖川のこのシリーズは、品質のよい本格ミステリとして安心して読むことができる。館や孤島を舞台としなくても、警察が普通に捜査をしていても、良質な本格ミステリを読むことができるのは嬉しい。ただ、常に一定レベルが保たれているので、“平均的”というイメージ・評論から逃れることができない。“安定した”という言葉はいつしか“マンネリ”という言葉に変わってしまう。とくにこういう短編・中編集の形で並べられてしまうと、よけいにそういうイメージが伝わってくる。ここはやはり、何らかのアクセントが必要となるだろう。本作品集でいえば表題作がそのアクセントに当たるだろうか。この殺人手段には驚かされた。似たような手段はあったような記憶があったが、こういう舞台で使われるとより効果的だろう。ただ、モロッコとほとんど関係のない事件であるし、他の人には推理のしようがないトリックであることが残念だが。
作者はマンネリを防ぐ意味でも、そろそろ気分を変えて江神シリーズを書いてみるべきだと思うのだが、どうだろうか。