平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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アンソニー・ホロヴィッツ『マーブル館殺人事件』上下(創元推理文庫)

 ギリシャでの生活に区切りをつけ、ロンドンに帰ってきたわたし、スーザン・ライランド。フリーランス編集者として働いていると、予想だにしない仕事が舞いこんできた。若手作家が名探偵〈アティカス・ピュント〉シリーズを書き継ぐことになり、その編集を依頼されたのだ。途中までの原稿を読んだわたしは、書き手が新作に自分の家族関係を反映しているのを感じる。ということはこの作品のように、現実世界でも不審な死が存在したのか? 『カササギ殺人事件』『ヨルガオ殺人事件』に続くシリーズ第3弾!(上巻粗筋紹介より引用)
 若手作家エリオット・クレイスが書き継いだ〈アティカス・ピュント〉シリーズの新作ミステリ『ピュント最後の事件』。編集者のわたし、スーザン・ライランドは、登場人物とエリオットやその家族との間に多くの類似点があるのを知る。エリオットは途中まで書かれたこの新作で何を企んでいるのか? 世界的な児童文学作家だった、彼の祖母の死にも何かがあったのだろうか? 調べを進めていると、なんとエリオットが……。『カササギ殺人事件』『ヨルガオ殺人事件』に並び立つ、犯人当てミステリの傑作登場!(下巻粗筋紹介より引用)
 2025年、発表。2025年9月、邦訳刊行。

 まさかの〈カササギ殺人事件〉シリーズ第3弾。第1作では46歳だったスーザン・ライランドは、本作では55歳である。本作だけでも楽しめるようにはなっているが、『カササギ殺人事件』の真相が明かされているので、やはり最初から読んだ方がいい。
 若手作家がエリオット・クレイス〈アティカス・ピュント〉シリーズを書き継ぐが、彼の祖母は世界的ベストセラー童話〈ちっちゃな家族〉シリーズの作者、ミリアム・クレイスだった。その新作『ピュント最後の事件』は、彼の家族間の秘密が隠されていた。
 編集者スーザンが作中作を読むうちに現実の事件と巻き込まれていくのは、過去2作と同じ。そしてスーザンが作中作の謎と現実の事件の謎に立ち向かうことになる。
 架空のパズルと現実の謎。2つが密接に絡み合いながら、最後は分かれて2つの解決が提供される。ダブルの味わいに酔いしれるシリーズ。それはまさかの第3作目でも変わらない。しかしダブルの味わいは1作ごとに違うところが素晴らしい。
 個人的には今までの中で、作中作と現実の事件のバランスが一番よく取れていると感じた。そして両方の謎と解決も非常に面白く、本格ミステリの楽しさを二重に満喫することができた。ただ、スーザンの言動が少々うざい。ここまで我が強かった印象はなかったのだが。
 これは傑作。今年もベストの上位をにぎわすことだろう。それにしても、第四作が準備されていることに驚きである。